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『ヤンヤミ』完結

『ヤンヤミ』9(イング視点)

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『ヤンヤミ』9(イング視点)


俺の目にはこの世界が白黒にしか見えないんだよね
実際に白黒に見えてるワケでもないんだケド…気持ちから来るものなのかな
闇魔法が俺に入ってからはもうずっとこんな感じ…
でもね、俺のこんな世界にもあざやかに見えるものがあるんだよ
「イング!ハッピーバレンタイン!いつも仲良くしてくれてありがとう
ハイ、愛と感謝のチョコね」
俯いていた俺の前に差し出されたのはピンクまみれの可愛くラッピングされた中身はチョコレートらしい物
「………セリちゃん……」
俺の目に鮮やかに映るのは君と、君が触れたもの
「…それは愛の告白……だよね
俺も君のコト…」
「残念だケド、イングが思ってる愛の告白とは違うの
今日はバレンタインだからね
私の大切な仲間や友達、弟にいつもありがとう大好き感謝と愛の想いをチョコに込めて渡してるってだけよ」
バレンタインか…カケルがまた「モテて困る~」とか言ってチョコの数自慢してきそう、ウザイよね
本命でもない義理でもない特別なチョコ、と君は笑う
俺の気持ち知っててこんなコトするなんて…
それで本命はあの男ってワケ?
許せない…死ねばいいのに……
俺が殺してもセリちゃんはあの男を生き返らせるだろうし、俺が殺したって知ったら絶対嫌いになる……
殺したいのに殺せない…
このドコにもやれない殺意と想いをどうすれば…気がおかしくなっちゃうよ
「………いらないよ……!」
受け取れない
そんなみんなと同じだけの想いしか詰まってないもの…虚しいだけ
「他の人にはあげないって約束してくれるなら貰ってあげてもいいケド…
大好きな君が他の人にもあげるなんて俺はイヤだもん」
いや…うん、やっぱりほしいとは思うかな
大好きなセリちゃんだもん
って言うか、他の男はこの世界から消したいよ
そしたらこんなコト言わなくても俺だけになるのに
「イングはなんで私が好きなの?」
俺の言葉に無理って言うか奇跡が起きてわかったって言ってくれるかどちらかの二択だと思ってたのに…
でも、すぐに答えられる質問
「あの時、声をかけてくれたからだよ」
「…たったそれだけのコトで?」
あの時…酒場で酔い潰れて大暴れして、あんまり大暴れしたきっかけのコトは酔ってて覚えてないケド
気付いたら君が俺を仲間にしてくれた
「たったなんてそれだけなんて軽いものじゃないんだよね」
君にとったら、何気ないコトかもしれないケド
俺にとったらとっても大切なコト
「闇魔法に自分が支配されるまでは仲間も友達も多かったと思うし、家族も親はいなかったケドお兄ちゃんがいて幸せだったよ
毎日楽しかった…」
「今のイングからは想像できないのに…でも、想像できるような気がするような……」
君だから見えるのかも
闇魔法のない俺が…だからそんな気がするのかもしれないね
「でも、俺がこうなると友達はみんな離れていっちゃった
兄も…
それからずっと君に会うまで1人で…寂しかったんだ」
仲間って友達ってなんだろうって考えが変わったよ
いつキレるかわからない危険な存在の傍になんていれるワケないのはわかってるのに…
それでも今の闇魔法に支配されてる俺の心は許せない憎い感情で溢れてる
昔の仲間や友達にそんな感情を向けては苦しいよ
「私は…たまたま天魔法を持ってて、闇魔法が恐くなかった
ただそれだけのコトよ
この力がなかったら…イングのコト恐がって関わろうとしなかったかもしれないんだよ?」
苦しくても悲しくても辛くても…
こんな負の感情が和らいで軽くなって
「その力がなかったら…なんて質問への答えは無意味だよ
その力があるもん
あの時、君に出会って今こうして目の前にいる
君の力がなかったら…その質問を聞くコトもなく出会うコトもなかったと思う……」
君の手を掴むと懐かしい感じが帰ってくるような気がする
困ったような顔をするケド、この手を振り払わない優しい君が好き
「イング……」
何か言いたげな君に「どうしたの?」と聞いてみたケド
「……ううん…なんでもない……」
何かを隠すように苦笑いする
それが気になりつつも、でも彼女は聞いてもなかなか答えてくれない
心配…
そんな感情、闇魔法を得た時からなかったのに
俺の見える世界は絶望しか感じられなくて、どんな人間も憎かった
全てがイヤなのに、死にたいのに死のうとしない
どうして俺は生きているんだろうって
何故、闇魔法を得てその力に負けた人のように自分を殺さないで…生きているのか不思議でたまらない
少しでも…いつかは…解放されるなんて夢を見ているのかな
期待…しているのかな、救われるコトを…
望んで手に入れたワケじゃない力に必死に足掻いているのかも
負けたくないって…
苦しくない辛くない悲しくない…
少しだけでも俺の見えてる真っ暗な世界に光が見えるような気がして…楽になれる
憎くない…君のコトだけは
世界中の人間が憎いと思ってしまう俺の心なのに……
でも…君だけが憎くてたまらない時もあるんだよ
世界中の人間に向けられてるものが君1人に思うコトだって…

「ふふふん、私も結構有名になってきたじゃない~」
カケルを殺された街を出た次の日の今日
彼女はすぐ近くのこの村に暫く滞在しようと言った
こんなに近くなら前の大きな街のほうが仕事もいっぱいあるのに…
まぁ大切な弟が殺された街にいたくないのかもだケド(そのまま本当に死ねばよかったのに…)
報酬だって何倍も違うし、この村だと大変な依頼でもボランティア価格だよ
まぁ新聞にデカデカと自分の姿が載ってるコトにとっても満足みたいだね
身内の間では凶暴で無慈悲な女の子に見えるけど
本当はとっても心優しい女の子で、パーティには闇魔法の俺がいるにも関わらず評判良く有名になった
俺に手を差し延べてくれたように彼女は誰にでも優しくて救うんだよね…
他の人にまでそうする所はイヤ
「なんか新聞に天使のようなって姉さんのコト書いてるケド…
みんな騙されている!!!!!!!
僕から見たら姉さんは悪魔だ!!いや大魔王だ!!
いつもいつもムカつくコトがあったら、他の人には八つ当たりできないからって僕がやられるんだぞ!?」
「いくら私が美しく可愛い慈悲深き女神様だからって、腹の立つコトだってあるわよ
カケルが昔『姉さんの辛いコトや苦しいコトは全部僕が受け止めてやるから!』って言ってくれたじゃない!」
「自分で美しいとか可愛いとか言ってる女神ヤダな~
そ、それは言ったケド…まだ覚えてたんだ姉さん、恥ずかしいな
いや!受け止める=ストレス発散のサンドバックって意味じゃねぇんだよ!?
なんでそういう風に受け取ったのかな!?」
「カケル様に愛されてるお姉様が羨ましいですわ…」
俺は彼女の弟のカケルが大嫌い
王様が言ったように彼女のコト好きすぎてムカつくんだもん…
姉弟だから心配するコトなんて何もないハズなのに…でも…本当…いなければいいのにな
「…セリちゃんはどうして有名になりたいの?」
冒険者になって有名にならなくても天魔法使いってだけで超有名になれるのに
まぁその有名も、天魔法が使える人がいるってだけで名前も顔も知らなかったケド
冒険者になって大活躍したらこうして名前も顔も新聞に載る
「それは…秘密……」
言葉は隠せても表情は隠せない
俺には向けられない見たコトない顔で嬉しそうに笑う
そんな君は凄く可愛いのに…
それが自分に向けられてないと感じると激しい嫉妬に襲われる
たぶん…昨日のあの男に見てもらいたいとかそんなくだらない理由なんだと思うよ……
そうじゃなかったとしても…
「……ふ~ん………」
俺は彼女が持つ新聞を取り上げて闇の炎で燃やし消滅させた
君が有名になったら色んな男が見る…そんなの許せない
そう思うと全てが憎くなっちゃうよ
今までも全てがイヤだったケド、それとは違う気持ち
彼女と出会ってから確かに心が落ち着く時があるけれど
逆に憎しみや苦しみが増えたような気もする…
とくに君のコトになると……
昨日のあの男は誰?…殺したい……
もう絶対に会わせたくない…考えさせたくもないよ
「少し散歩に…」
あの男を殺したい衝動にかられるケド…そんなコトしたら彼女に嫌われると何度も自分に言い聞かせる
気分転換をしたくて俺は君から離れるように別行動を取った

小さな村だからあまり散歩できる所もないんだケドねと思いながら歩いていると
その小さな村のせいなのか今1番会いたくない男を偶然目撃してしまった
「はっ…!アイツは……」
反射的に気配を消して民家の影に隠れながら様子を見る
そっか…どうしてセリちゃんがこんな小さな村を選んだのか今わかったよ
あの男がいるから…
「殺さなきゃ…」
きっとこれからもあの男が生きてる限り彼女はアイツを追う
俺の心は耐え難く何度もこの苦しみを味わう…そんなのイヤだ
数分は嫉妬で盲目になってて気付かなかったケド、俺はすぐに少しだけ冷静さを取り戻す
そのきっかけとなったのはあの男の傍にいる女を見て
なんとなく2人の雰囲気が…怪しい……
俺がそう思っていると当たったみたいで、2人が抱き合うところを目撃してしまった
ハ、ハグ…してるってコトは……あれ?えっ?この2人って彼氏彼女の関係なの?
ハグ…はぐはぐ……
あぁ、俺もセリちゃんをはぐはぐしたい!
カニバリズム的な意味で…
って!これってそれじゃセリちゃんはあの男にただの片想いってコトだよね!?
なんだ~そっか~
俺以外の他の男に好意を持つだけで殺したくなるケド、彼氏彼女な関係じゃないなら全然マシだよ
ホッとした!
「あの男には彼女がいるから諦めた方がいいよって教えてあげないと…」
「…知ってるよ……」
たまについ思ったコトを口にして独り言になる俺の言葉に返事があった
あの男への嫉妬心で周りに全然気付かなかったケド、いつの間にか俺の後ろにはセリちゃんの姿が…
「カズ様には彼女が何人もいるの
私の知ってる女達以外にももっといると思う…」
俯いて話すから表情はわからないケド、声は弱々しく…
こんな君を始めて見たような気がする
「セリちゃん!?知ってたって…
えっしかも彼女が何人もいるって…
浮気!?いや、二股とかしてるのアイツ!?」
何人もだから二股じゃないか
彼女が何人もいるなんて見た目と違って最低な男じゃん
「それを知ってるなら君はなんであんな奴を好きでいられるの!?」
「好き…そっか
イングは気付いてたんだね
私がカズ様を好きってコトに」
うっ…やっぱり俺の思った通り当たってたんだ……
「カズ様も私のコトが好きなんだって、両思いなの」
彼女が何人もいる奴なんかの好きが君の好きと同じ気持ちの両想いのワケない…
それは君だってわかってるんでしょ
だから悲しく笑うんだ
「どうして…君はそんな子じゃないと思ってたよ……
彼女が何人もいる最低な男を好きになるような女の子じゃ……」
「カズ様はそのうち全員と別れて私だけを彼女にしてくれるもん…」
「そんなコト言ったのアイツ?」
「言ってないケド…」
「じゃあなんで、あんな奴が好き…」
君のコトが好きすぎてしつこく聞いてしまう俺に君は嫌気をさす
「そんなのわかんないよ!!
ほっといて!イングには関係ないコトなんだから!!」
「関係なくなんかないもん!
俺は君のコトが好き!だから関係ないなんて言わないでほしいよ…」
本当は君だってわかってる
わかってるからそんなに悲しくて苦しい顔をするんだ
俺も一方的に君を想ってるから…少しでもわかるような気がするんだよね
「私も…わからないの……
なんでこんなに好きなのか……
昔、カズ様に助けてもらったコトがあるんだケドその時の記憶がなくて
なのにカズ様の想いだけは残ってるの…」
えっ!まさかの記憶喪失だったの!?
そんなそぶりまったくだったからわからなかった
そうなんだ…セリちゃんは記憶の一部を失ってて、ワケもわからないままあの男が好きなんだね…
何があったんだろ…気になるケド
「その想いごと忘れちゃえばよかったのに…」
俺を好きになればいいのに…
「それができるならこんな悲しい想いしないよ」
アハハって笑ってるケド、やっぱり君の表情も声も痛々しい
そんな君を見てると抱きしめたくなっちゃうじゃん…
「えっ…!こ、困るよイング!…離してください」
どうして敬語?
「離さないよ…
忘れられるから大丈夫
心配しないで、俺がなんとかしてあげるからね」
「なんとか…」
俺は離したくないケド君に突き放されてしまった
「ふふ…変ね、イングって闇魔法持ちのクセに
今は全然そんな感じしない
本当のイングって……」
君は一度俺から離れると少しだけ楽になったように笑ってくれる
最後の言葉は呟くような声で聞こえなかったけど
「好き」
君が笑ってくれるなら、俺にそれを向けてくれるなら幸せだよ
「ありがとう
…前向きには考えようかな~アハハ」
「ホント!?」
「イング良い匂いするし」
「そこ!?好きになる基準そこなの!?」
「ダメならいいや」
「ダメじゃないよ!
俺を好きになってくれるならなんでもいい…」
こんな絶望に囚われて自分さえ消えそうな俺なのに
なんでかな、君のコトは救いたい助けたい守りたいって思う
自分がどんなに辛くて大変でも君を優先したい
この気持ちが今の俺が生きていられる力
きっと、今まで死ななかったのも
闇魔法の影響で全てに絶望しても、まだ未来に光があるとドコかで信じていたからなのかもしれない
今思えば俺は君に出会うタメに生きてきたような気がする
だから…君のタメに尽くすよ……
どんなに心が闇に囚われても
君への愛だけは失わない

-続く-2011/03/06


 
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