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『短編小説』

『存在共同』

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『存在共同』


勇者として生まれ、勇者として死ぬ
生まれた時から使命感やら正義感やらなんやらを運命として受け入れ
死ぬ時にそんな自分の人生に疑問を持ったコトもなかった
何度も死んで生まれ変わる度に記憶なんてない俺はいつも初めてのコトばかりなのに

「また貴方ですか、私の邪魔ばかりを
毎度その飽きない人生の繰り返し、こちらが飽きれますね」
魔王と出会い剣を向けるとうんざりと眉を寄せため息つかれる
どうやら魔王の中では今までの俺の存在の記憶を持っているようだ
「オマエのコトなんて俺は覚えてないケド、飽きるってんならちょっとは大人しくしてたらどうなんだ」
魔族と人間は相容れない存在なのかもしれない
相性の悪いもん同士は関わらないのが1番だが
だからと言って、魔族の好き勝手放置させていたら人間が絶滅しちまう
「人間は自分達が生物の1番でないと気が済まないらしいですね
私達に先に喧嘩を売ってきたのはそちらだと言う事を貴方は知らないだけ」
「………………。
俺が聞いた話じゃ…そっちからだって……」
どっちが先に手を出したかなんて…本当の最初まで遡らないとわからないのかもしれない
どっちもお互い都合の良いように仲間に伝えてるのかもしれないし……
魔王に向けた自分の剣が迷い微かに揺れる
その隙を魔王は見逃さず、俺の剣の刃を掴み近付く
「貴方は…私を殺せる唯一の存在
こうして敵対する関係は永遠に続くでしょう」
剣を引こうとしてみたがびくともしない怪力さで押さえ込まれるが
「…その力は最初の頃は憎く思いました
ですが、最近は」
魔王からは不思議と殺気は感じなかった
敵同士なのに殺意を持たないなんて…俺はさらに戸惑う
さっきからのこの会話は俺を騙す魔王のウソなのか?
ウソをついてるようには見えないし感じないのに…
「最近は…?」
長身の魔王から覗き込まれるように目を見つめられて、何か弱腰になってしまう
「いいえ…今日はお帰りください
私の口から申しても貴方は信じないでしょうから
ご自分の目と耳で確かめて
そして、貴方が気付いた時にでも…
またお会いしますよ」
敵意なんてまったく感じない魔王の瞳が和らぐように細められると、剣を掴む魔王の手にはめられている指輪がキラリと光る
光りに気を取られた一瞬で魔王は俺の前から煙りのように姿を消した
そしてカツンと固い音の鳴る地面に落ちた指輪に目をやり、思わず拾ってしまう
「俺の目と耳で確かめる…?何をだ?」
俺が何度も生まれ変わるきっと永遠に近いくらいの時を魔王は知っている
そんな彼は俺より色んなコトを知っているだろう…
世界の変化すらも…
俺は拾った指輪を手に握りしめながら
とりあえず目の前の敵もいなくなったから帰るコトにした


俺が魔王退治の旅に出てから数年振りに故郷である小さな村に帰ると、みんなが出迎えてくれた
心配してくれてた人や無事であるコトにホッとしてくれた人やら、本当にみんな温かくて良い人達ばかりだ
そして、盛大におかえり勇者様の宴を開かれた後
疲れもあったケド、どうしても気になって家にある歴史書を俺は読み返してみた
俺が生まれ変わる前のコトを全て綺麗サッパリ忘れてたとしても、こうして自分のコトは書物として残っているから
だいたいのコトはわかる
生前の俺はこんなんって実感はないんだが……
勇者として生まれる人間は魔王を倒せる唯一の力を持っているとか
必ず男で容姿も性格も毎回同じとか
わかりやすいな
まぁ簡単にで、交友関係とかまで書かれてない
そして、いつも必ず勇者の勝利で世界が平和になる
だから勇者はいつも崇められ慕われ頼られる
今の俺もみんなにチヤホヤされ、そうして旅に出た
きっとまた最後は魔王に勝利して世界を救う人生なんだろう
それが永遠に繰り返されていると…つまらないと言うか飽きるな……
俺に記憶が残ったままだったら同じコトの繰り返しに、魔王と同じように飽きると思う
記憶がないから新しいコトで飽きとは無縁なんだが…
書物を読み終え、ベッドで仰向けに寝転がる
「疲れた……寝よ」
と思った時、ベッド近くにある机の上に置いた魔王の指輪が目に入る
つい持って帰ってきちゃったケド…呪いの装備とかじゃないよな
装備するとデロデロデンとかイヤ~な音楽が流れて外せなくなるとか……
俺は興味本位で指輪を左中指に嵌めてみる
「ちょっとブカブカだ…」
まぁそりゃそうか、あっちは長身の男で俺は小柄な男……
見たコトないような宝石だケド、綺麗だな
そう思いながら指輪を抜こうとしたら急に不思議なコトにリングのサイズが縮んでピッタリとして抜けなくなってしまった
「わぁ!?やっぱり呪いの装備だったんだ~~~!!?……………まぁいいや寝よう眠い」
一瞬、抜けなくなって焦ったケド猛烈な睡魔には勝てなくすぐに眠りに入った


翌日、疲れで寝過ぎた俺は朝食と言うには遅い時間の昼食を取ろうと外へ出た
長いコト留守にしてたから家には何もねぇんだよな
「ん…?」
なんだろ…なんとなく村の人達の視線がいつもと違うような感じがした
目が合うとパッと反らされるし…
そうして人通りの多い広場に着くと、村では異様な光景とも言える今までにない状況が広がる
王国騎士団が陣どっているのだ
こんな小さな村に何故?
俺が勇者として生まれても魔王退治に出ようとも、オマエが来い的な感じで一度もこの村には来たコトがないのに
しかも…村人の異様な視線は全て俺に向けられている
何かイヤな予感がする……
「捕まえろ、あの小柄な女みたいな男が勇者だ」
おい!いきなり理由も言わずに捕まえろは100歩譲って許すが
小柄な女みたいなってわざわざ言う必要あるか!?
気にしてるんですケド!!!!
みんな同じカッコの鎧を着ている中で一際派手な奴がたぶん団長だろう
ソイツが俺を見た瞬間に捕まえろと命令する
一斉に騎士達が俺に剣を向けて向かってくる
待て!捕まえろやって話になんで剣を振りかざしてくるんだ!?
殺す気満々ですか!!?
「ちょ、ちょっとなんなんだよ!?
いきなり襲ってくるなんて、そこらの山賊でも目的くらい話すぜ!?」
金と食い物よこせ!!って…
話しが通じるような雰囲気でもなく俺は腰にある剣を引き抜き騎士達の剣を弾いていく
「ヒャッハハハハ!!!!こいつ弱いぞぉおお!!!!」
騎士団に奇声を発するキチ〇イが混じってるが大丈夫か…!?
正直、人数が多い以前に非力な俺は騎士達の剣を受け止めるどころか弾くコトでいっぱいいっぱいだ
俺の力は魔王や魔族にだけ有効で、人間にはまったく…
それどころかたぶん…俺は男としても弱い……
今まで人間と戦うコトなんてなくて、俺の足は始めて後退していた
周りの村人は傍観者、今まで崇められ慕われ頼られていた俺は誰にも助けてもらうコトもなく
ついに剣が耐え切れず折れてしまった
「あっ…俺の剣が……」
勇者の剣を、魔族だけを斬る剣が…人間の剣に耐えれなかったのか
「ど、どうすんだよ!?
この剣がなかったらどうやって魔王を倒すって言うんだ!!??」
予想しなかった今の状況と頼りの剣が折れて取り乱してしまう
俺が追い詰められると団長が騎士達に道を作らせ俺の前まで歩き冷静な声で言い放つ
「これからはそのような剣も必要ないって事だ
勇者よ、お前の命でな…」
なんで?って聞くより先に団長は手にした大剣で俺の両足を膝上から切断した
予想外のコト、一瞬のコトで俺は走る激痛に涙する
「あぁあああああッ」
ショックから来るのかそれとも別のコトから来るのかはわからないが、すぐに意識が途切れて痛みも感じなくなった

目を覚ますと薄暗い部屋に自分がいるとわかって身体を起こす
いや…足がないから肘をついて上半身しか起こせない
……変だな…足の痛みがない
でも意識はハッキリしてるし……
勇者には回復魔法があるケド、こんな大きな怪我だと冷静さをなくして何もできないから痛いハズなのにな
だんだんと目が慣れると自分の寝ていた床には妙な魔法陣が描かれているコトに気付く
「これは…」
「目を覚ます前に始めようと思っていたが、おはようさん」
声のするほうに顔を上げると神官長が悪魔のような笑みを浮かべている
騎士団長の次はアンタですか……
しかもよく見てみると周りには力の強い聖職者だけじゃなく大魔導師のみなさんまでお揃いで…
「何かイヤな予感だけしかしないんだケドな…
どうして俺にこんなコトするのか教えてほしいもんだ」
諦めのように、流されると思ってダメ元で聞いてみたが
「そうだねぇ、今日で勇者さんは永遠にさよならな訳ですから教えてあげよおっかなー」
神官長と話したのは始めてだが、めっちゃおちゃらけた奴だったんだな!?
「何故、倒しても倒しても魔王がまたこの世界に生まれてくるか
考えた事ありますかぁ?」
イラっとした
倒してもまた魔王が生まれてくるかなんて…考えたコトないな……
神官長の挑発的に人をバカにしたような口調にイラつきながらも耳を傾ける
「僕達の古い古いご先祖様達は馬鹿だから気付かなかったでぇーす
しかぁし!僕のひいひいひいおじいさまくらいの時代から、ある疑問を持ったり持たなかったり」
どっち!?
「それはぁ…勇者が生まれるから魔王も生まれるのではないか!?」
その言葉を聞いてイヤな感じに心臓が跳ねた
俺が生まれるから魔王も生まれる…?
そんな…まさか……
「勇者が存在するから魔王も存在するのではないか!?」
「いやいやいやいや…そんな……何を根拠に……」
答える声は弱々しく出て、神官長に届いてないかもしれない
それじゃ今までの俺の永遠とも思える生まれ変わりは?
それって俺のせいでこうなってるってコト?
自分のせいのくせして世界を救うとか勘違いして…?
ワケがわからない…全てが気持ち悪くなって吐き気がしてくる
「これから行う儀式は勇者を永遠に生まれ変わらせない事
つまり!存在を永遠に消滅させる事なんどぇす!!」
「そ、そんなの…イヤだ……自分が消えるなんて…恐いよ……っ」
「はいいい???何をおっしゃいますか勇者さん?
君のせいで人類は迷惑してるんですよ!!!!
魔王さえいなければ世界は人類の物でしょうが!!!」
そんなそんなそんな…わからない
何が正しいのか何が間違ってるのか何が良いコトなのか悪いコトなのか
俺は今まで人間を守るために世界を救うために
魔王と戦うのが運命なんだって思ってそうしてきた
そう考えた瞬間、俺は最後に見た村人達の目を思い出した
俺を敵に見るような、いらなくなったような、邪魔でしかないような…
「さぁ優秀な僕の同志の皆さん、やっちゃってください!」
顔を上げるコトもできない俺は複雑な苦しい感情に涙を流す
何も言えなくて動けなくて
少しずつ魔法陣が光り出していく
魔王が最近はって言葉を濁して言っていたのは、この時代の変化だったのかもしれない
そして今、時代の変化についていけなかった俺の末路がこれだ
もっと早くに気付いていたら俺は…俺は?
人間が敵になってしまった俺には…人間の敵の魔王と……
偶然涙が左中指にある指輪に当たると、魔王が消えた時と同じようにキラリ光った
そう思った時は魔王が俺に背を向けて姿を現す
「わわわ!?魔王がどうしてここに!!!??」
神官長を始め、魔王を目の当たりにした人々がざわめき動揺する
「私は勇者に殺されるのは構いません
ですが…それ以外の人間に殺される事を、黙って見過ごすとでも」
魔王がキッと神官長を睨み付けると神官長は呂律の回らない奇声を発して顔が歪み頭が弾けた
それがさらに周りに恐怖を植え付け逃げ惑う人々だが、魔王の力で出入口は全て封鎖される
「貴方が死ぬと私まで死にます」
魔王はそう言って足のない俺を抱き上げる
その間にも逃げれない人々が片っ端から見えない力に潰されたり弾けたり砕けたりして悲鳴が渦巻きながら倒れていく
「助けて…くれるのか?」
「………魔法陣はもう発動しています
いくら私でも止められなければ出る事もできない…」
申し訳なさそうに魔王の声は低く下がる
表情はいつもと変わらず冷たいのに…なんでだろ、優しさと温かさを感じる
「魔王は全部知ってたんだね…
俺との関係も、時代の変化も……」
「はい、私は貴方と共に生まれ死ぬ存在
時代の変化でいつか私達の関係に気付く者がいるだろうと思っていました」
いつの間にか周りの人間が全て惨殺され静まり返っていた
何も感じない…人間が殺されるコトに……
俺は今この瞬間、勇者じゃなくなったような気がしたよ
人間のために永遠の消滅より…自分が生きるコトを、魔王を選んだ
「なんか…ゴメン……
俺は何も気付けなくて、ずっとオマエのコトを殺してたバカだったんだ」
「いいえ、楽しい時もありました
貴方は覚えていないでしょうけれど」
また涙が溢れて流してしまうと魔王は片腕で俺の身体を支えて、もう片手で涙を拭ってくれた
「そして、いつからか貴方は私を殺す時に涙を流して謝る
いつも人間を選ぶから」
そうか…変化してないってコトはなかったんだ
いつからか、魔王とちょっとでも仲良くしてたってコトなんだな
それを聞くと自然と笑みが浮かぶ
だってそれって、もっと生まれ変わりを繰り返したらいつかは友達になれたかもだろ?
「……もっと生まれ変わりたかったな
そしたら、次は魔王と」
「…次は私と」
友達に…って言おうとしたら、その言葉を塞ぐように口づけされた
「………ハッ!?えっ何どういうコト!?」
「仲良しの人間同士がする事らしいですが、何かおかしかったでしょうか?」
な、うん…仲良しの人がするね
でもこれは恋人同士の仲良しって意味なん……のは知らないんだろうな……
ちょっと複雑な気分
「いや…そんなコトより、この魔法陣のせいでもう二度と俺は生まれ変わるコトないんだぞ
だから魔王とももう……」
「世界はここだけではありません
私達の知らない世界は沢山あり
この魔法陣はこの世界に生まれ変わる事ができないと言う小さなものです」
絶望が一瞬にして希望に変わる
また生まれ変われるんだ
魔王と一緒に、今度は知らない世界に…
今までの勇者としての使命も運命もないのかな?
そしたら…次は……
俺の希望に満ちた笑顔に魔王が小さく頷いた
それを最後に魔法陣は発動し、俺達はこの世界から永遠の消滅となってしまった
でも、いいんだ
生まれ変わったら別の人生があるから
1人じゃない、魔王も一緒だもん
楽しみだな…
次は最初にお互いの本当の名前を知るコトから始めようか


-終わり-2013/04/09
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