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『短編小説』

『君だけの神様』

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『君だけの神様』


自分が神様だから、自分の思うコト感じるコト考えるコトが正しいと思ってた
だから、生まれたばかりの俺でも人間を救えるのだと信じていて
その自信から始めて俺は今日この人間の世界にやってきたんだ


「ふ~ん…ハロウィンか~」
って何だろ?
人間の文字や言葉は読めたり聞いたりできるケド、意味を知らないモノはたくさんあったりして…
どうやら人間には季節によって色々なお祭りがあるみたいだね
真夜中の町にあるポスターを見てその言葉を呟いていると、俺のすぐ傍で女の子が石か何かに躓いてこけてしまった
「ッ大丈夫!?」
咄嗟に手を差し出すと怯えた目で俺を見る女の子はなかなか手を取ろうとはしない
「…ドコか怪我しちゃったのかな?」
俺が優しく微笑みかけると女の子は迷いながらも遠慮がちに手を出すからシッカリと掴んで立たせてあげる
その時、彼女の長袖がズレて白く細い腕が見えた
あっ…アザができてる……
立たせると、座ってる時はスカートで隠れてて見えなかったケド
足にも所々アザができていた
躓いた時にできたのかな…?
それにしては不自然な…
「…あ、ありがとうございます……」
小さな弱い声は今にも消えてしまいそうで
俺がジッとアザのある腕を見ていたら、悲しいようになって恥ずかしそうに袖を引っ張り隠す
「痛かったね
もう転んじゃダメだよ
気をつけないと、君は女の子なんだからね」
そう言って俺は彼女の袖の上からアザのあった部分にソッと触れる
次の瞬間、彼女は痛みがなくなったコトに不思議に思いながら
袖をめくると綺麗にアザは消えている
俺は神様だから傷を治すくらい簡単だったりして~えへへ
「………っ……」
アザが消えたのを見た彼女は悲しい顔から驚き自然と頬が緩んでいく
「君の笑顔は可愛いね」
自分が笑ったコトに気付かなかった彼女は俺に言われるとまた悲しいような顔に戻ってしまった
どうして君はそんな顔を…?
何か、辛い痛い恐い寂しい苦しい悲しいって感情が…伝わってくるような……
「……あっ、女の子がこんな夜遅くに出歩いてちゃ危険だよ
俺が家まで送ってあげる」
ハッと思い出したように俺が言うと彼女はさらに表情を曇らせる
「…家には帰りたくないんです……」
「どうして?夜は危険だよ」
「危険でもいいです
最悪、死んでも……」
みんなが幸せじゃなきゃイヤだって思ってしまう俺は彼女の言葉にショックを受けてしまった
死んでもいいって…それって、幸せじゃないから出る言葉でしょ…?
「そんな…どうして、死んでもいいなんて……」
理由を聞きたくて彼女の心に問い掛けようとした時、イヤな感じが身体を駆け巡る
この感じ……すぐ傍に人間じゃない何かがいる感覚
「死んでもいいって覚悟ある奴のほうが、後味悪くなくっていいよな
まっ…死にたくないって言われても俺は躊躇うコトなくぶっ殺すケド」
そのイヤな感じはすぐに俺達の前に姿を現した
今俺と話していた彼女とソックリ瓜二つの姿をした…死に神が……
「そんな…この子が死ぬってコト?」
死に神は死が決まってる生き物を連れていく存在だ
死が決まってる相手の姿になって命を奪いに来るコトもある
彼女と同じ姿で現れたってコトは間違いない
俺は始めて死に神に会ったケド…
「ん?オマエ…俺が見えんの?
あぁ…最近生まれた無名の神だっけ?
そこの女がオマエのコト見えてるなら死期が近い証拠だろ」
死に神から聞いて始めて知った
知らなかった
俺は人間には見えないんだって
どおりで昼間、色んな人に挨拶しても無視されると思ったよ!
でも、死期が近い人間には神様が見えるんだって
神様の俺も死に神も…
「なのに…なんで邪魔すんだよ?」
死に神が近付くと俺は無意識に彼女を背に隠していた
「死期が近いって君は言ったよね?
じゃあ今日死ぬんじゃないんでしょ?」
「どうせそのうち死ぬんだから今でも一緒だろ」
「一緒じゃないよ…」
彼女は死にたいって言ったケド
不幸なまま死なせるなんて俺はイヤだ
死期が変えられないなら、せめてその時までに幸せを知ってほしい
俺は人間を幸せにする存在なんだよ
だから…今死なせるワケにはいかない
「彼女はまだ死なせない!」
俺が強く言い放つと死に神はイラッとしたようにカッとなって
「何も知らないくせに…」
そう呟き、手にした鎌を振りかざし俺ごと襲い掛かってくる
俺は攻撃を受けても怪我をするくらいで死なないケド、彼女に当たったらおしまいだ
まだ自分の力に慣れなくても必死に祈ると死に神の時間を少しだけ止めるコトに成功する
「今のうちに行こう!」
まさか成功するとは思わなかったケド、俺は彼女の手を掴み逃げ出した

もう大丈夫かなと思った場所で足を止めると
息を切らした彼女が呼吸を整えてから口を開いた
「さっきの人…私にソックリだった……」
人気のない広場、泉の前にあるベンチに彼女を座らせて休ませる
人間は疲れってものがあったね
「さっきのは死に神だよ…
君を迎えに来たんだ
君は…もうすぐ死ぬ……」
あまり口にはしたくないコトだけど、もう見えてしまっている彼女にごまかしのウソをついた所で
不安になるだけだと思った
「そっか…」
驚くコトもなく諦めのようなそれを待っていたと言うような彼女の表情に俺の胸が痛む
死期が近いからって死に神が自ら命を奪うのは稀なんだケドな…
どうしてあの死に神は彼女を…?
死に神が死期を待たず自ら命を奪うには何か理由があるのかな…?
生まれたばかりの浅はかな知識しかない俺は冷静になった今自分の行動を考え直した
でも、わからないから頭を振って別のコトに集中する
俺は彼女を幸せにするって誓ったよね
「そうだ…死ぬ前に何かしたいコトとかほしいものある?
俺がどんなコトでも叶えてあげる」
「……いっぱいあるし…何も叶わないから…」
そんな悲しいコト言わないで
笑顔で話しかけても彼女の全てを諦めたような発言に俺の笑顔は壊れちゃうよ
そんな俺に気付いた彼女はちょっと間を開けてから話す
「……私の毎日から連れ出してくれる人、助けて救って守って…ほしい……
理想は夢は、素敵な恋愛をするコト
いつか…いつか私が幸せになれる日が来るかなって…消えそうなでも微かな希望を持っていました…
そうじゃないと死んでしまいそうだから
でも、やっぱり幸せになれる人間なんてほんの少しで
不幸なまま死ぬのがほとんどで…
私もそうなんですね…」
神様は人間を幸せにする存在なのに、現実はそれが間に合ってないのかもしれない
もしかしたらできないのかもしれない…
俺はどんな神様になる…?
君を幸せにする神様に
「祈ってくれたら願ってくれたら、俺が叶えるよ」
なれるかな…
まだ何も知らないケド、俺は彼女のコトが気になって仕方なかった
「……貴方は一体………」
俺が差し出す手に戸惑いながらも君が重ねようとした時
1人の男がやってきて、君を捕まえた
「こんな所にいたのか!」
「あっ…ぃや…!」
君の髪を掴み引っ張り強引に連れ帰ろうとする男の行動が信じられなかった
俺はまだ生まれたばかりで何も知らなくてこんな人間がいるコトが想像できてなかったからなのか
待って!と叫んでるのに
君の手を掴んで助けたかったのに
俺は彼女に触れるコトができなかった
君を助けられない…?
たった1人の人間に不信感を持ってしまったために俺は人間を拒んでしまい触れられなくなってしまった
なんで…こんなんじゃいけないのに
君のコトが見えるだけで触れられない
俺はその後、君が男に…父親に連れ戻され虐待を受けているのを見ているコトしかできなかった
こんなヒドイ事があっていいのって信じられなくなった
見たくなかった認めたくなかった
もしかしたらもっと酷い人間世界もあるのかと思ったら恐くなった
君がボロボロになって気を失うまで俺は見ているだけなんて……無力だ
君の家の屋根でどうしたらいいのか考えていると、君の死に神がやってきた
「知ってたんだね…彼女のコト
だから、早く殺して連れて行きたかったんだ……」
「ふん…気付くのが遅ぇんだよ」
死に神が正しかった
彼女のコトを知っていて、1日でも早く彼女を死として解放して救いたかった
それがこの死に神の優しさだった
「良い人なんだね」
「別に…それだけじゃない」
死に神が俺の隣に座る気配に気付いて俺は顔を上げた
冷たい空に満月が輝いている
「あの女は俺の双子の妹なんだよ
俺はもっと小さい頃に殴られた時に打ち所が悪くてこうなっちまったんだ」
「…えっ?」
「アイツも俺と同じ死に方をする…」
よく見ると、死に神は彼女の姿に変えていたワケじゃなかった
男の姿で顔が彼女にソックリなだけなんだね
わざわざ姿を変えなくてもいいくらい…
どれだけ妹のコトが大切なのかが伝わってくるよ
1番わかってるんだろうな
だって、君は彼女と同じように悲しい顔をして心を痛めているんだもん
そんな気持ちを早く終わらせたいんだって……
「ってコトだから、もう邪魔するんじゃねぇぞ
アイツにも興味本位で近付くな」
「ううん!俺は彼女を幸せにしたいって気持ちは変わらないよ」
もう一度、彼女に触れるようになりたい
たぶん人間に不信感を持ったからダメになった
それならそれ以上に強く彼女を救いたいって思えば…
俺は強く心に誓って、彼女の部屋の中に姿を現した
「………あれ、私……?」
1時間くらいして彼女は気が付き目を覚ます
アザは全て治してあげたよ
もう君に触れられるようになったから
「さっきはゴメンね…」
目を覚ました君の頭を撫でると君は俺から離れて距離を取った
「貴方が人間じゃないってコトは薄々と…
誰か知らないケド、私に関わらないでください…」
さっきより頑なに心を閉ざされてしまった
「俺は関わりたい
君のコト、守りたいんだ」
「さっきは助けてくれなかったのに?
同情ですか?そんなものいらない
出てってください……」
そう思われて当然だよね…
俺の弱い心が君に触れられなくなって、何もできなかった……
最初は神様だからみんなを幸せにしないといけないって思ってたケド
今は君だけを幸せにしたいって思うようになった
それは同情なんかじゃないんだよ
君の可愛い笑顔が見たいんだ
きっとたぶん…いや、これは運命で俺はその可愛い君に恋をしたんだよね
だから、好きな子を幸せにするのは当たり前のコト
俺はどんな神様になる?
君だけの神様になるよ
「ココから連れ出してあげる
すぐには信頼してもらえないかもしれない
でも、俺は永遠をかけて
君を幸せにする
いつか君に愛してもらう」
「………はっ…?いきなり何を……」
突然の告白に予想もしてなかった君は目を瞬かせて、ほんのりと頬を染めながら驚く
「今は警戒されて嫌われて不信に思われて当然だよね……
だから、君がこの手を取ってくれたら
さっき言ったコトを君に誓うよ
約束する……」
今は少しだけでいい
少しだけでも俺に希望を持って見て感じて
もう無力な自分はイヤだから
現実から目を反らさない
どんなコトでも受け止めてみせる
「………私、もうすぐ死ぬのに……」
「生きてるうちにも幸せになってもらいたかったケド
死んだら終わりでもないんだよ
死んでから幸せになるのもありだと思うな
俺とずっと一緒にいられるもんね」
「……永遠をかけて………どうせ死ぬなら、最後の希望かもしれない貴方の手を掴んでみてもいいのかな……
さっきのコトは言い訳聞いてあげます」
差し出した手は戸惑いながらも君が取ってくれた
さっきは触れられなかったこの手を今度は離さないからね
俺は強く君の手を握り引っ張る
腕の中に抱いて窓から飛び出して
まずは残された短い期間で2人で人間世界の幸せをしてみよっか
なかなか信頼されないかもだけど、頑張るよ
いつか君が心を開いてくれるコトを信じてね


こうして俺は当初のみんなの神様から、君だけの神様に
後悔はしてないよ
俺はちっぽけな神様だから君だけで精一杯
でも、君のタメならどんなコトでもやり遂げるような力が無限にありそうだケドね


-終わり-2012/10/30
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