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『Bilocation』

Bilocation『過去編:仲間』9

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Bilocation『過去編:仲間』9


城に近付くとなんだか様子が違うような気は俺もしていた
周りにはたくさんの魔族や魔物、そして人間の死体が山のようにあったからだ
戦い終わった後みたいで今は俺達以外に動く者はいないようだが
「まだ生きてる人間の匂いがするね…」
イングヴェィが言うと香月も頷く
険しい2人の表現を見て俺は血の気が引く罪悪感に襲われた
「香月が…留守にしていたから……俺のせいでこんなコトに」
城の前で足を止め、状況を把握する
そしてこういう状況にしてしまったのは俺のせいだと言うコトもわかった
「貴方のせいではありません
私が勝手に留守にしただけ」
「俺達がいない時を狙ってくるなんて人間って卑怯だよね
嫌いだな
セリくん以外…全員殺してもいいかな」
人間は今まで香月とイングヴェィに敗北してきた
他の魔族も強いが人間は頑張れば勝てないコトもなかった
だから今回2人がいない時を狙ってきた
チャンスは逃さないか…
「…すぐに城を取り返そう
まだ生きてる魔族だっているハズだろうし
中には人間のルルさんだっているんだ」
人間に比べ圧倒的に数が少ない魔族達
世界中に魔族や魔物もチラホラいるが魔王の城にいる奴らも多くはない
香月とイングヴェィがいない時に人間が頭数揃えて攻め込めば全滅の可能性はかなり高いのかも
もう遅いかもしれないケド…
今は一刻も速く動かないと
「セリくんが言うならすぐに城を取り返してあげる」
「私は表から、イングヴェィさんは裏からお願いします
危険なのでセリはここで待機、いいですね」
イングヴェィと香月は勝手に話を進めて俺を置いてけぼりにした
ちょっと待て!俺待機とか!?
2人とも早すぎて発言するヒマも与えてくれなかったんですケド!?
この状況で俺が大人しく待てるワケないのに…
でも…俺は一応これでも勇者なワケだから
今回の敵が人間なら大人しくしていたほうがいいのか?
人間を裏切って100%魔の味方にはなりたくない…
半分ずつ…俺はどっちの味方でもいたい
香月もイングヴェィも好きだ
でも人間のレイもミソラさんもルルさんも恋時も…捨てたくない
と、とにかく!香月やイングヴェィはほっといても大丈夫だろうがルルさんが心配だ!
こんな所で待てるワケないし、俺も行こう
香月が城の中に入ってから数分後に俺も同じ場所から城内に入った

城内もかなり激しい戦いがあったのか床はもちろん、壁や天井にまで魔と人間の血肉が混じり飛び散ってる
香月とイングヴェィがいない時なら人間が本気を出せば魔を相手にして互角かそれ以上になるのか…
イングヴェィがまだ生きてる人間の匂いがするって言ってたからその人間がかなり強そうだな
何人生きてるのかはわかんねぇケド
足元に注意しながら俺は広い城の中を進んで行く
今は昼間でも雲がかかってるココ一帯はあまり明るくはない
それでも昼間は夜より明るくて窓から射す明かりが薄暗い廊下を少しだけ照らす
その先に人影が見える
遠目から見てすぐに人間だとわかったケド、相手が俺に気付いて駆け寄ってくるまでは誰かはわからなかった
「セリ!やっと見つけた…」
名前を呼ばれたと同時にその人影が誰かに気付く
レイ…?数ヶ月振りのレイの姿に俺は言葉を失って立ち止まる
あの時、レイは瀕死の重体で別れたから…
よかった元気な姿が見れて
こんな所で再会できるなんて思わなかったし、急すぎて頭が混乱する
「その前に隠れないと駄目だ
…あいつはやばい」
少しだけレイは俺を確かめるようにジッと見つめていたケド、ハッとして俺の腕を掴み近くの部屋へと隠れる
混乱した頭が状況を把握できない俺は引っ張られるままだ
あの惨状の中…レイはたくさんの返り血を浴びてるみたいだがレイ自身は大きな怪我はしてないみたいでちょっとホッとした自分がいる
「レ…」
話し掛けようとしたらレイの手で口を塞がれる
そのすぐ後に
「ドコ行ったの?隠れたって無駄だよ…」
レイが言ってたアイツはヤバイって奴の声が聞こえた
それはおもいっきり俺の知り合いのイングヴェィだった
俺もイングヴェィはヤバイと思う
レイから見てもヤバイってわかるか…
「……面倒なコトになったね…」
イングヴェィの足音がこの部屋の前で一瞬だけ止まったケド、すぐに足音が遠ざかる
人間の匂いで居場所がわかるイングヴェィがココに追い掛けてたレイがいるのにスルーするハズがない
俺が一緒だからなのか?
たぶんそうだ
だから見逃した
イングヴェィの足音が聞こえなくなるとレイがホッと肩を落とす
「セリ、オレはお前を助けに来たんだ
すぐにここから出よう」
感動の再会に浸ってる場合でもユックリ話をするヒマもないとレイは急かすように俺の手を引く
「待って」
助けに来たって…
レイはあれからずっと俺のコトを心配してくれてたのか
香月とイングヴェィが留守にした今がチャンスだって思って…これだけの兵を集めて助けに来てくれた
これだけの被害を出してるんだから思っちゃいけないんだろうが
素直に……嬉しい…こうして助けに来てくれたコトが
正直に嬉しいケド…でも俺はココにいたい
レイにもちゃんと話したらわかってくれるかな
魔王の香月のコトを
「心配するな
オレが必ず助けてやるから、ここから逃がしてやる
もうあの時のオレじゃない…
必死に逃げれば生きていける」
待ってって言ったのはそっちの不安じゃねー!
本当に逃げても、もれなく最強のボディーガード(イングヴェィ)がついてくるからその心配はなかった
レイは慎重に全神経を集中させて部屋から出て廊下を進んで行く
「違うんだレイ!俺の話を聞いてくれ」
前を歩くレイに話し掛けていたら急にレイが立ち止まる
背中で前が見えないから少しだけ顔を後ろから覗かせると離れた距離に香月の姿があった
「どうやら生きている人間は1人だけのようですね
私の城を荒らしそれを奪う人間…生きてここから出られると思っているのですか」
それって俺は物扱いなのかよ
香月は城を荒らされ仲間をたくさん殺されたからなのか、かなり怒ってるって感じる
このままじゃ2人が衝突して確実にレイが死ぬ…
今の香月に俺が話して大人しくなってくれるか?
「か…香月……待って、話を」
「貴方は黙っていなさい」
ピシャリと言葉を切られて怯んでしまう
空気が恐すぎ
クソ…イングヴェィはドコに行ったんだ
性格は危ないしたまに痛いコトもしてくるケド、イングヴェィは何かの理由で100%俺の味方だ
香月と違って俺の言うコトは何でも聞いてくれて、必ず力になってくれる
だから香月を止めるにはイングヴェィを頼るしかないってのに
「ココは俺に任せてレイは逃げるんだ
レイじゃ香月に勝てない
殺されるぞ」
「オレが何の為にここまで来たのかわかって言ってるのかセリ!?」
レイだって香月に勝てないってのは戦う前から十分わかってるハズ
それでも立ち向かおうとする姿勢を崩すように腕を引っ張る
「俺は死なないよ
後でちゃんと話すから今は逃げて」
まずは香月から説得しないと
たぶん香月は…俺を殺したりはしないよな…?
「セリ、それから離れ私の傍に」
「レイ早く…」
少しずつ香月が距離を縮めてくる
香月は恐いしそれでもレイは動こうとしないし
サンドイッチ状態が1番辛いって今の状況
「助けに来たんだから逃げる時は一緒だろ」
レイは俺の手をシッカリ掴み、香月と反対方向に走り出す
引っ張られるようして俺はレイについていく形になり
香月の表情が少しだけ不機嫌に変化すると同時に鞭を振るう
「香月…ッ」
俺を攻撃するなんて…
リーチが長く予測不能な鞭の動きに避けれる気がしない
当たれば…確実に切断、最悪死ぬ
レイは逃げる足を止めない
城の壁や天井、床まで破壊しながら追い掛けてくる香月の鞭にこのまま逃げ切れるのか
いや…俺は死ぬワケにはいかない!レイだって殺させたりしない!香月に捨てられるのもイヤだ…!
「イングヴェィ!いるんだろ!?俺を助けてくれよ!」
弱い自分じゃ今の状況を回避するコトなんてできない
イングヴェィの名前を叫びお願いすると後ろから追い掛けてくる鞭の動きが止まりイングヴェィが姿を現す
「言われなくても助けてあげる守ってあげる
セリくん、このまま逃げていいよ」
レイは一瞬だけイングヴェィのコトを見ただけで足を止めずに俺を引っ張った
「邪魔しないでください」
「さっきの俺が止めなかったらセリくんに当たってたよ
香月くんは殺すつもりなんてないハズなのに…余裕がないんだね
あのレイって人間に横取りされたのがそんなに悔しいの?」
「…………………。」
イングヴェィの声がどんどん小さくなる
2人の姿が見えなくなって声が聞こえなくなって、それでも体力のある限り走り続ける

なんとか香月から逃げ切った俺達はいつの間にか勇者の拠点についていた
勇者の拠点…全世界から集められた勇者が魔王と戦うタメに用意された小屋
数ヶ月前にココで勇者同士の殺し合いを目の当たりにしたのが鮮明に記憶から蘇る
死体はいつの間にか処理されていて小屋の中は新しい食料が追加されているくらいで他に変化はない
「なんとか逃げ切れたな」
息を整えながらレイが口を開く
レイ…本当にスゴイ久しぶりだ
改めて、こうして横顔を見ると生きていて元気でいてくれて安心した
前より凄く強くなった?
変わった所はそれだけで他は前と変わらないでいてくれてるかな
「思ったより元気そうだが…酷い目に合ったりしなかったのかい?
拷問を受けたり奴隷のように扱われたり」
拷問とかされてたら1分で俺は死ぬぞ!
そんな苦しい痛いのに何ヶ月も耐えらんねぇし!
奴隷は~ある意味、香月とイングヴェィ以外の魔族からはそう思われてるかもしれないケド
そういう扱いは受けてないから
「大丈夫だ俺は見ての通り元気だろ」
心配するレイに笑いかけるとホッ安心していく表情に変わっていく
「そうか」
「レイが助けに来てくれるなんて思わなかったからビックリしたよ
ありがとう来てくれて」
いつかドコかで会えたらいいなって思ってた
レイは今度こそ殺されるかもしれないのに、それでも来てくれた
それは嬉しい
でも、俺はレイに全部話さなきゃいけないよな
レイならわかってくれるって信じてる
「これからが大変なんだ
何処へ逃げるか考えなければいけないだろうし、他にも色々と…」
真剣に俺のコトを考えてくれるレイの思考を止めるように俺は首を横に振る
「いや、俺はココにいるよ
レイも一緒にいよう
死ぬまで逃げ続けるよりずっと良い
それに俺にはやりたいコトができたから」
「はっ?ここにいるって自分が何を言ってるのかわかっているのか?」
「魔王は本当は良い奴なんだよ
他の魔族だってムカつく奴もいるケド
悪い奴がいるのは人間も一緒だし
魔族にだって人間と同じように良い奴もいるってコト」
上手く伝えられないかもしれないケド、俺はココにいる間のコトをレイに全て話す
魔王を信頼してるとまで言った
「…………………。」
話が進んでいくと同時にレイの顔色も曇っていくのがわかる
信じて…もらえないのか
ルルさんはわかってくれたからレイもわかってくれると思ったのにな
「騙されてるな」
レイは俺の話を聞いても否定した
「信じてくれないのか…」
「セリの事を信じていない訳じゃない」
レイと口論になりそうな時、周りの空気が一辺する
それに気付いたのはレイも同時で俺はよく知ってる気配の方に振り返った
凍てつくような鋭いこの雰囲気を持ってるのは香月しかいない
「…もう逃がしません」
いつもと違うのは香月から殺気も感じるコトだった
ココは任せてとか言ってたイングヴェィは負けたのか!?
今にもレイに襲い掛かりそうな香月を止めようと俺は前に出ようとしたが
レイに腕を強く掴まれ引っ張られるとナイフを突き付けられる
「それ以上近付いたらこいつを殺す」
えっ!?おいおいレイ!俺を人質にして何悪役みたいなコトやってるんだ!?
自分が殺されるとわかったから俺を盾にして裏切るのか…?
いきなりのコトで頭がついてこない俺は不安でしかなかった
殺されると言う不安じゃなくてレイが俺を裏切ったのかって言う疑いだった
「それは何のつもりでしょうか」
香月の殺気は変わらないままだが、俺を人質に取られると足を止める
俺も何のつもりなのかレイに詳しく聞きたいです
「あんたが死んでくれたらセリは離してやる
それが出来ないなら…」
そう言いながらレイは俺の首に当てていたナイフに力を入れて徐々に傷を作っていく
普通に痛い!?本気なのか…
「どっちが死ぬか、あんたが決めるんだ」
レイはまっすぐに視線を香月から反らすコトなく答えを待つ
どうしていきなりレイはこんなコトを
俺はどうしたら……混乱しててわからない
シッカリしろ俺!って思うのに
「…わかりました」
傷付く俺を見ていた香月は目を伏せて何かを決意する
香月の様子から…何だかイヤな予感がするよ


-続く-2012/06/27
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