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『Bilocation』

『Bilocation』25

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『Bilocation』25


リジェウェィさんに作ってもらった私の剣がドアから差し込む真っ赤な夕焼けを反射させ輝きを放ちながら足元に落ちている
「…………………。」
言葉を失ってしまったのは私だけじゃない
レイも目を見開いて私の足元にある剣を見つめていた
(願いを叶える剣…)
セリくんの苦し混じりの声に私はドキリとする
「……勇者…お前は…人間の敵………死ね」
村長は呪いを込めた声で絞り出すように言うと私を睨みつけたまま息絶えてしまった
「……私が…私が……村長に対して、ムカついたからだ
私の願いをこの剣が叶えた
私のせいだ……私がみんなを殺したんだ……」
真っ赤な夕焼けの光を受け真っ赤な血に染まった私の剣を拾い上げる
羽根のように軽くて、手にするとどんなコトでもできそうな勇気を与え安心する私の剣と感じるのに
今となってはそれにプラスして恐怖と後悔さえ感じる
この剣は本当に良い人じゃないと持っちゃいけないものなんだ
ゲームやアニメの主人公みたいに常に正しい人間でなければ…
「しっかりしろセリ!」
レイは崩れ落ちる私の肩を掴む
「この剣をセリから取り上げたのはこいつらなんだ!
剣を盗んだ奴らに当然の天罰が下った、そうだろう?
お前のせいじゃない
この剣がセリの手にあったままなら、こんな惨劇が起きたと思うかい?
この剣は本当の持ち主以外が持ってはいけないって事なんだ
セリが村長に対して腹が立ったからではない絶対にだ!」
「レイ…」
レイの私を庇う気持ち、励ます心、味方でいてくれる強い絆が
肩を強く支える手から、私の瞳を反らさずまっすぐに覗き込む視線から十分に伝わってくる
親友のレイにそう言われると、そうかな…って納得してしまいそうになる
私1人じゃ心が折れてしまって立てなかったかもしれない
レイに支えられて崩れ落ちてしまった身体をもう一度立ち上がらせる
でも
「あーら、それはどうかしら?」
日が沈み、日の当たらなくなったドアから姫は不適な笑みを浮かべながら部屋に入ってきた
「その村長達は勇者を捕らえている間に剣を取り上げたのは一時的に預かったと言う事にはなりませんの?」
「それは……」
珍しくレイが言葉に詰まる
苦しく眉を寄せるレイの横顔に私の心が痛む
私を庇うために無理のあるコトを言ったから今何も言えないんだよね…
レイ、私のせいで……
「よろしいですわ
レイの言う通り仮に盗んだと言う事にいたしましょう
では、ただの盗っ人相手に何十人も巻き込んで無惨に殺す事は正しいんですの~?
いくらなんでもやりすぎではありません事?」
「や、やめて!レイは悪くない
悪いのは……」
「そう!悪いのは貴方、勇者ですのよ!!
魔に寝返り人間の敵となり、それは今まで噂でしたけれど
あたくしは今この目で確信しましたわ
貴方は人間を裏切った人間の敵である事を」
これ以上に面白いコトなんてないってくらいに姫は高笑いして、折り畳んだ扇子を私に向けた
「お父様にご報告させて頂きますわね
そうなれば隣の国であろうと貴方は死刑間違いなしですわね
全世界の人間から貴方は憎まれるんですのよ」
「…………………。」
私の決定した未来を姫が言い笑う姿に私は何も答えられなかった
そう言う未来になるのは仕方がないくらいのコトを見られてしまったのだから
見られなくても…いずれわかるコト……
「……これでやっと清々しますわ…
邪魔な貴方が消えてくれると思うと、これ以上に嬉しい事はないですわね」
姫は私の近くまで来るとイヤな笑みを浮かべて耳元で私にだけ聞こえる声で囁いた
それからくるりと背を向けてご機嫌で部屋から出て行く
私はただただ姫が消えるまでその姿を目で追うコトだけしかできなくて
「………セリ……」
レイはずっと私の肩を強く抱く
今はもっと…何かを伝えたいのに伝えられないのかもどかしそうに私の肩を掴んだまま強く引き寄せる
「大丈夫だ、オレが何とかしてやるからな」
レイを見上げると、ずっと苦しげに寄せていた眉が和らいで微かに笑みを見せた
何か思うコトがあったのかな…
(…この気持ちはありがたいケド、レイにこれ以上迷惑はかけられない……)
うん……
「…レイは…何もしなくていいよ
レイに迷惑なんてかけられない
今までいっぱい迷惑かけたかもだケド、自分のコトはなんとかするからさ」
私はレイの好意を受け取らないと言う意味を込めてレイの胸を押して離れた
だって今回は人間の敵になるってコトなんだよ
そんなコトに人間のレイを巻き込めない
結夢ちゃんもルルさんも恋時も…人間のみんなはまだ今からなら人間の生活に戻れると思うから
私は布を取り出して、血まみれになった自分の剣を拭く
綺麗にはなってないケド、ベッタリついたままよりは…
そうして剣を鞘に納めてもう一度考える
私はこの剣を捨てたり手放したりしない
これは私の剣、この惨劇は私が引き起こしたもの
人間の敵になってしまうのは自業自得
なら、この剣とともに解決できるように頑張って行くしかない
ついでに、いやついでじゃないケドその辺をあさって短銃と短剣も回収しておく
忘れる所だった
「…………………。」
「レイ…?」
レイのほうを振り返ると何か言いたそうに口を開いたケド
「……いや」
口を閉ざして、言葉を飲み込んだ
気になるケド……
レイはたまに何か言いたいコトを言わずにそのままにするコトがある
なんで言ってくれないのか…
親友だから何でも言わなきゃいけないってコトはないケド、なんだか寂しい
今日はショックなコトがありすぎて心に余裕がないのかな


そうしてレイと私は村人達を供養してから城へと帰ってきた
「村で起きたコトを香月さんに…」
報告するってレイに告げようとしたら近くの森で物凄い音がする
その音の直後に木々が倒れる痛々しい音までして、ただ事ではないと誰もが思うコトだった
「な、何事だ!?」
勇者処刑とかでもう人間軍が攻めて来たとか!?
それだったら仕事早すぎだよ!?
「セリは香月さんに報告を
オレが先に様子を見て来る」
「あっ待ってレイ!」
そんなの危ないからって声をかけると同時に私の名前を呼ぶ魔物の声が聞こえる
「セリ様~~~!!やっとお帰りになられましたね!!」
「えっえっ何々?どうしたんだ?」
城の中もさっきの騒音でパニックになっている
また始まった!とかいつになったら納まるのか!とか恐ろしい!とかそんな声が聞こえてきた
「ある方が大暴れなさっているのです!!」
5mくらいある長い身体でキツネのような魔物は私の首に纏わり付いて首を振っている
キツネさんみたいな魔物のこの仕草や行動はかなりパニックになってる時に出るもんだケド、一体何が……言われなくても
これだけ城から悲鳴や怯えた声が溢れ流れている何かを私がなんとかできるワケないよね!?
香月さんに頼んでよ!!?
「ある方って、イングヴェィの事か?」
レイが聞き返すとキツネさんが高速でうんうんと首を縦に振る
「魔王様がイングヴェィ様を止められるのはセリ様しかおらぬとおっしゃっておりますので
どうかどうか!イングヴェィ様をお静めください」
マジか、イングヴェィなら私が有効だね
香月さんでも止められそうだケド、あえて私を指名するには…もしかしてイングヴェィが大暴れしてる理由って私関係…?
そういえば喧嘩したままだったし……?
「最近のイングヴェィはセリには甘いと見ていて感じるが
大暴れしているイングヴェィでも大丈夫なのか?」
レイは心配してくれるケド、たぶん私じゃないと絶対ダメ……
喧嘩したコトで大暴れしてるなら……
「俺が1人で行ってくる
レイ達はココにいてくれ」
私に巻き付いていたキツネさんをレイの肩に乗せて私は息を吐く
イングヴェィは私には絶対攻撃して来ないとは思う
わからないケド…
でも、大暴れしてるイングヴェィはレイ達には攻撃してしまうかもしれない
だから絶対に連れていけない
(イングヴェィのコトだし…レイ達は危険だからココにいてもらうのが正確だな)
私はレイに待っていてと強く押し伝え、激しい音のするほうへと走った

イングヴェィに近づくに連れ、激しい音がさらに大きく聞こえる
この森の奥で大暴れしているんだろうケド、もう森もかなり荒れていて自然破壊もいいトコよ
森さんが何やったって言うんだ!!森林破壊反対!!
「イングヴェィ…!と、リジェウェィさん…?」
イングヴェィの姿が遠目に見えて名前を叫ぶと同時にリジェウェィさんの姿も確認できる
イングヴェィが1人で大暴れしてるのかと思ったら、これはリジェウェィさんと喧嘩しているの?
私の声が聞こえなかったのか2人の喧嘩は止まらない
いや…これを喧嘩って言葉で終わらせていいものか
喧嘩を通り越して最終戦争レベルだ
リジェウェィさんの魔法とイングヴェィの能力が激しくぶつかり合う
(いやーもうスゲーわ
ある意味感動するよな
こんなスゴイ戦いが見れて)
いやいやいや!?何セリくん感動してんの!?
まぁ私もちょっとスゴすぎて見てるのが面白いって思っちゃったケド
セリくんが感激の息をつく気持ちもわかる
リジェウェィさんは純粋な魔法を使う
炎や氷や風や回復と言った魔族でも人間でも使うコトができる魔法
それもこれだけの魔法の種類を簡単に扱えるなんてかなりハイレベルな…もしかしたら世界一の魔法使いかもしれないと思えるくらいスゴイ
それに対してイングヴェィは自分の能力をフルに使っている
イングヴェィの能力は想像したコトが実現する
でも、想像力が乏しいから自分が見てきた範囲内のコトしか頭の中で描けない
それでも魔族である限り、人間の私達よりスゴイものを見てきているだろうし知っていると思うからこんなスゴイ光景を作り出せるんだろう
「なかなかしぶといな…過去の俺はこんな厄介なものを創ってしまったなんて後悔するよ」
あぁ…完全にイングヴェィ病んでるわ
病みモードに入っちゃってる
いつも明るく私に元気をくれるイングヴェィの声は低く冷たく響く
イングヴェィの能力でリジェウェィさんの身体が一瞬バラバラになった風に見えたケド
心臓が止まる隙も与えず一瞬にして自分の身体を元通りに治し無傷にできるリジェウェィさんはもはや魔族一の最強なんでは…って感動してしまうな
イングヴェィの能力ならリジェウェィさんの存在をなくすコトだってできるハズなのに
それができないのは、イングヴェィの目の前に記憶にリジェウェィさんの姿があるから
どれだけイングヴェィが頑張っても…きっとリジェウェィさんには勝てない
もちろんイングヴェィに負けなんてありえないから
この戦いはずっと続いて終わるコトなんてない
勝たれても困るんだケドね!
リジェウェィさんは私の友達の1人なんだから…
「イングヴェィ落ち着いて!
なんで戦ってるのかわからないケド、こんなのダメだよ!!」
私が2人の間に飛び出すと、2人とも私の存在に気付いていなかったのかハッとこちらを見る
そして運が悪かった私は2人の魔法と能力が発動してしまった時に飛び出したみたいだ
(バカ!)
ヤバイ…!私のバカ!
イングヴェィは絶対に私を攻撃しないケド、私からイングヴェィの攻撃に当たりに行ってどうすんの
目をつむって衝撃に耐えようとするケド、100%即死ですよねコレ
「セリカちゃん!?」
「セリ!」
イングヴェィとリジェウェィさんの声が聞こえる
もうダメ…
私を挟んで2人の攻撃がぶつかり合う直前で懐かしい匂いが香る
そうすると、痛みもなく暫く経っても何も起きない
「いい加減にしなさい」
懐かしい声につむっていた目をそっと開けると私を守る影があった
(香月…)
セリくんが呟いて私はホッと安心感に包まれる
私を背にして立つ香月さんの姿を見上げて
どうやら香月さんが私達を守ってくれたみたいだね
(…いつも俺がピンチになったら来るんだ
いつもはほったらかしなのにな)
ふんっとセリくんは私の中でそっぽを向く
まだ拗ねてるの…何で喧嘩してるのか知らないケド、素直じゃないなー
「香月…守ってくれてありがとう」
私が変わりにお礼言っておいてあげたよ!!
私の言葉に香月さんは軽く振り向いて私達の無事を確認してくれる
そんな私達の前にリジェウェィさんとイングヴェィが歩み寄って会話ができるくらいの距離で止まった
イングヴェィのいつもの明るい笑顔は消えて、冷たく冷酷なまるで別人のような表情で香月さんを見ている
前にも見たコトがある
これが本当のイングヴェィなの…?
魔族であるイングヴェィの姿…表情…?
私の心がぎゅっと痛んだ
………普通にしてたら綺麗でクールカッコイイタイプなんだねイングヴェィって
いつもも綺麗でカッコイイ感じだケド、明るいタイプだからイメージがちょっと変わって新鮮だわ
(こんな時にイケメン大好き病を発病しなくていいから!)


-続く-2013/09/18
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