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『Bilocation』

『Bilocation』24

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『Bilocation』24


上級魔物の住み処に近付くと妖精に出会った
(この子は確か…上級魔物の友達のチロルだったな)
へ~この可愛い子が上級魔物の友達なんだね
チロルは手乗りサイズの身体で私の目の前まで飛んで来ると、私を誰か確かめるようにジッと見つめた
そして私が前に会ったコトがあるセリくんだとわかると急に泣き出しそうになる
「ど、どうしたの!?」
慌てる私の髪をチロルは引っ張った
「着いて来いって言ってるのかもしれないな」
(チロルは人間の言葉は理解できるがチロルの声は人間に聞こえないから、レイの言う通りたぶん着いて来いってコトだと思うぞ)
わかった!なんかただならぬ雰囲気だし、着いていくね!!
私はチロルに導かれながら歩いて行く
その先は上級魔物が住み処とする小さな洞窟だった
天井も2mくらいと低く結構狭い
上級魔物だって言うからイメージ的に図体がデカイとか勝手に思っちゃったケド…
奥まで行くと淡く光る泉がある
その中に何かが浮いているのが見えた
チロルがその浮いている何かの傍まで行くから私はよーく目を凝らして見ると
生首が泉に浮いている…
長い黒髪が水に広がり暗く染める
目からは血の涙のようなものが流れていて、黒髪でわかりにくいケドきっと水は真っ赤なのかもしれない
………ホラーじゃないですか…
(俺も最初ホラーかと思った
人間の生首に見えるケド、立派な上級魔物だよ)
マジか
「あの…どうしたんですか?
チロルが悲しがってるようなので、何かあったのなら話してください」
「その声は、魔王様から寵愛を受けている勇者様でしたかな
このようなみっともない姿で申し訳ありません」
ほら!やっぱりみんなセリくんのコトそう思ってるんだよ!!
香月さんと仲良しだからみんな気使っちゃうんだよ!!!
(…………………じゃあなんだ
俺は香月がいなかったら、とっとと魔物に殺されてたってコトか?
って言うか、…香月は結構冷たいんだぞ!
俺は香月よりレイと一緒にいるコトが多いし
香月が忙しいからってわかってるケド…)
はいはいわかったから、セリくんが香月さん大好きってのは
もういいよね?話進めて
(別にそんな!今は香月と喧嘩中だし!!)
「上級魔物のワシですが、情けなくもこの近くに住む人間にやられてしまいましてね」
「人間に…?目をやられてしまったのですか?」
私は近付いて上級魔物の顔を覗き込む
「いいえ…頭の方を」
言われて、上級魔物がひっくり返り後頭部を見せられると私は息を呑んだ
なんてヒドイ……
後頭部は粉砕されてグチャグチャになってしまっている
私はすぐに上級魔物の後頭部を治そうと回復魔法を唱えてみるが
「俺じゃダメだ…結夢ちゃんレベルの回復魔法を使える人じゃないと」
私の回復魔法じゃちっとも効果がなかった……
結夢ちゃんは危険だからって置いて来ちゃった私の判断がダメだったんだ
いや…ヤク村で捕縛されたりもしたから危険なのは危険だった
でも…
「セリ…」
どうしたら…と思い詰めていたらレイが私の肩を叩く
「勇者様のそのお気遣いだけで十分ですよ
ワシの核が損傷してます故に、どのような回復魔法も効きませぬ」
「そんな…」
「余命1億年ほどになってしまいましたが」
めっちゃ長生きだな
めっちゃ長生きなんだケド
(魔物に寿命はねぇからな
戦いで殺されたりとかしない限り自然に死ぬってコトはないみたいだ
100年も生きられるかわからない人間の俺達からしたら、えっ?って思うが
人間にしたら余命1年とかそういう感覚なのかも)
そっか…じゃあ悲しいコトだね
チロルが友達の余命1億年と聞いて大泣きしてる
「どうしてこんなヒドイ事を…」
私がポツリと呟くと上級魔物はふぅとため息をこぼす
「近くに住む人間の若者2人が、この住み処に来て寝ている所のワシを襲ったのです」
上級魔物の話では、先に襲って来たのは人間のほうで抵抗して相手の人間に怪我を負わせたとのコトだった
上級魔物の話にチロルがうんうんと頷くからチロルもその一部始終を見ていたのかもしれない
しかも襲ってきたのは一度ではなく二度らしい
「『魔物は人間の敵だ殺せ死んで当然だざまぁみろ』などの言葉は今でも耳に残っております」
「………………ゴメンなさい……人間がヒドイ事をして」
魔物は人間の敵じゃない
死んで当然なんて間違ってる
人間に悪い奴がいるなら魔物にも悪い奴がいる
それは、人間にも魔物にも良い人がいるのだから
魔物=悪なんて差別してはいけないよ
「勇者様が謝る事ではありませんぞ
その人間達と勇者様達の違いくらいはわかります故にワシは人間達に仕返しや復讐をしたりしない
ただここで友達と静かに暮らしたいだけで」
「うん…
…俺がちゃんと村長と村人達に貴方の話をしてくるよ
友達と静かに暮らせるように頑張ってみる」
あのクズ村長だからどういう結末になるかわからないケド…
私が約束すると上級魔物は表情を和らげて血の涙を流すのを止めた

上級魔物とチロルと別れてレイと私は村へ戻る道を歩いていた
「あのクズ村長マジクズだったな
自分の村人が先に手を出してきたクセにちゃんと本当かどうか確かめず一方的に魔物が悪いと決め付けて責め立てるとかマジクズ」
私の腹の底からの怒りは収まらない
「八つ裂きにでもしてやらな気が済まないぜ!!」
プリプリ怒る私にレイは苦笑して、村人に殴られた私の後頭部を撫でながら宥める
「そうだな、殴られ損になるな」
………レイが私を宥めるとすぐに心が落ち着いてくる
もう愚痴なんてどうでもよくなるくらい、私を前向きにさせてくれるの
「……まぁ…あぁいうクズがいるからこそ、俺は人の優しさとか弱い者を守る心とか考えて勉強になったり成長したりするワケで…
誰も傷付かない平和な世の中が良いって思うのに
本当にそんな世の中になってしまったら、人間は成長なんてしないんじゃないかって思う
イヤなコトがあるから、これはおかしい自分はこうならない自分ならこうするって考えたり感じたりするんだ…」
わからない
誰も傷付かない平和な世界が良いに決まってるのに、そんな甘ったれた世界じゃ人間は心も感情も何も学ばず成長できないのだとしたら
本当はどっちの世界が幸せなんだろう…
「……セリはやっぱり凄い」
「えっ?」
んーと考えているとレイがふっと息を吐いて笑みを零す
「セリはそうしていつも色々な事を考えているだろう
オレだったら、村長に腹が立つだけで終わっているぞ」
「俺が考えすぎの神経質だって!?」
「その性格ならストレスは人の何倍もありそうだ
でも、オレはセリの何事も真剣に考えて自分なりの答えを見つけ出す所が昔から好きだ
セリの考え方が好きなんだ」
レイは満足そうに爽やかに笑顔を見せる
その言葉は私とめちゃくちゃ気が合うって言われてるみたいで嬉しくなった
ちょっと照れ臭いケド…
でも、そうなんだ…
レイは私のコトをセリくんのコトをそう思ってくれてたんだ
だから…親友なんだね………嬉しいな
友達がいるってこんなにも心が安らかに感じるんだね
「レイとなら、魔族と人間が仲良くなる世界にできる日も遠くない気がしてきた
1人じゃ厳しいコトも親友と一緒ならなんだってできる気がしてくるな」
レイの笑顔に私も最高の笑顔を返す
(レイの気持ち始めて知った…
俺もいつも頷いてくれるレイが好きだ
俺は間違ってないんだって思えるから
世界中でたくさんの人に認められなくても、誰か1人でも俺を認めてくれるコトがあるなら
これ以上に嬉しいコトなんて…
夜中に香月に内緒で買ってきたお菓子をバレずに食べれた時くらいだな)
セリくん!?ボケなくていいんだよ!?
恥ずかしいからって照れ隠ししないでよ!
「言われなくても、セリの為ならどんな事でも協力しようじゃないか」
任せろ頼れってレイの頼もしさにセリくんに言ったコトなんて忘れて
「ま、まぁそんなコトより
クズ村長のコトだケド」
私も恥ずかしくなって無理矢理話題を戻す
「いくら自分の村人、身内だからって必ずしも正しいとは限らないんだ
それなのに事実を確認せずに100%信用して事を大きく最悪な方に持って行くなんて
村のトップとして失格だな
俺は学生の頃にコンビニで働いたコトがあるんだが」
「……こんびに?」
(どういう所だ?)
この世界にコンビニはないのか
なんでも売ってる24時間365日開いてるお店
(24時間365日!?
そこは奴隷が強制労働させられてる闇組織関係の店なのか!?)
セリくんが動揺してるケド説明するの面倒だからいいか
「その時の友達だって思ってた奴が、店の金を盗んでいたんだ
盗みがバレると消えちゃってさ
だから俺は友達だろうが仲間だろうが、必ずしも正しいとは思わないように学んだ
むしろ、悪いコトしてたら叱ったり注意してわかってもらうのが
友達や仲間ってやつじゃないかな
悪いコトしてる友達や仲間を放置してたらその人が不幸になるだけだしね」
友達が悪いコトしてるのを知ったらショックを受ける
でも、辛くても悲しくても向き合ってあげるコトが大切なんだと思う
「あぁ、もう一度しっかりと村長や村人達と話そう」
私達はお互いに目的を確認し頷き気合いを入れ直す
そうして村へと戻る頃には日が暮れかける空は真っ赤に染まっていた

村の入口近くに止まっている姫の馬車を横目に村へ入ると、妙にシーンとしていて静かだ
「おかしいな?」
私が首を傾げるとレイもそう感じたのか隣で頷き警戒心を見せる
(…イヤな予感がするな)
私の中で眉を寄せるセリくんの警戒心と二重の心で私はゆっくりと村長の家へと向う
ドアの前まで来てノブに手をかけるとレイが私の手を掴み制する
「中の様子を窓から確認してからにしよう
人の気配がまったくしないのは…変だ」
そうだよね!もしかしたらいきなり無差別連続殺人鬼とか中に潜んでて飛び出してきたらめっちゃ恐いもんね!?
レイに言われて身体を低くしながら窓に近付く
そうして窓から中をコッソリ覗くと
「っ…これは一体……」
「うっ…」
一目から一瞬で中の状況を脳が理解すると目をつむって反らしてしまう
私の言ったコトが当たったのかどうかはわからない
でも、村長の家の中はたくさんの人が無惨に殺されて生き絶えていた
(どういうコトだ…この短時間で何があったんだよ……)
信じられないと言う声音でセリくんの響く声に私は覚悟を決めてもう一度窓から中を覗き込む
よくわからないケド…部屋の中は1本の鋭利なものが芸術は爆発だ!とでも言わん限りに曲がりに曲がって人々の身体を突き刺し暴れ回ったかのような感じだ
人々の身体から鋭利なものに伝わって滴る血を見ると、この惨劇が起きたのはついさっきなのかもしれない
「人間の仕業じゃなさそう……」
「魔物の可能性が高いな」
レイの魔物って言葉に複雑な気持ちになる
もしそうなら、この村と魔物との関係は修復不可能なまでに最悪な状況よ
「まだ生きてる人がいるかもしれない」
私はハッとしてドアを開ける
「待てセリ!危険だ!」
何が起きたかもわからないのにとレイは心配して私を止めようと手を伸ばすケド、私はレイの手をすり抜けて中へと入っていく
レイの心配も通り越すだけで、私が部屋に入り近付いても鋭利なものは動くコトもないし魔物の気配もない
「生きてる人は…」
それでも私は慎重になってほとんど死んでいる人々を確認しながら鋭利なものを避け奥へと進む
「ゆ…勇者……」
呻く声が微かに聞こえて私はそっちに視線を向ける
(村長はまだ息があるのか)
鋭利なものは村長の身体を何度も貫いているが、幸い急所だけは外しているみたい
でも、このままじゃ回復魔法は使えないよ
「この惨劇に生きている奴がいるとは」
レイが鋭利なものに触れ、これをどう外そうかと頭を悩ましていると
「貴様…勇者……人間を裏切る…噂は本当……」
血を吐きながら途切れ途切れに発する村長の言葉に私の心臓が凍る
「何を…俺は人間を裏切ってなんか……」
確かめる思いで身を乗り出し私と村長を遮る鋭利なものに手をついた時、鋭利なものはまるで逆再生でもするかのように突き刺していた人々の身体から引き抜き元ある形へと戻った
鋭利なものに刺し支えられていた人々が床へと倒れ込み
鋭利なものは元ある形になると床に音を立てて落ちる
「私の…」
それを見た私は全身の血が抜けるような衝撃に襲われた
ショックで今の自分が何なのかを忘れるくらいに…
だって、そこに落ちてるこれは私の…
「剣……」
なのだから……


-続く-2013/09/16
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