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『Bilocation』

『Bilocation』23

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『Bilocation』23


馬に揺られながらヤク村を目指している途中にセリくんからヤク村の村長との約束と当時の出来事を教えてくれた
1年くらい前の話らしい
目的地の途中にあったヤク村にたまたま泊まった時のコト
近くの森に棲む上級魔物と村長の間で長く続く揉め事があったそうだ
村長の話からは上級魔物が自分を襲ってくるから戦うと言っていたが
上級魔物の話からは村長がゴミを自分の棲む森に捨て散らかしたから怒っているとのコトだった
元々が気の大人しい上級魔物は魔物にしては珍しく森の妖精や精霊達と仲が良く、ずっと人間に対しても無害な存在だったと
話を聞く限り、気の大人しい上級魔物を怒らせた村長が悪いんじゃ…って私は思う
だんだんとエスカレートしていったお互いの戦いは
ついに村長が上級魔物の友達である妖精を傷付けてしまった
それに怒り狂った上級魔物は「お前の村人を全員皆殺しにする」と怨み呪いを宣言する
これはヤバイと思ったセリくんは上級魔物と村長の間に入ってなんとか取り持つ
傷付いた妖精はセリくんの回復魔法で治せる程度のダメージだったためにすぐに元気な姿を見せたから上級魔物の怒りを抑えるコトもできた
もうお互いに関わらないようにと話したみたいだケド
「勇者のくせに魔物の肩を持つのはおかしい
このままじゃ村人が皆殺しにされるから殺す」
と村長に言われたセリくんは
「襲わせないようにします」
と約束をし、場を治めて一先ず解決となった
上級魔物は魔王の寵愛を受けているセリくんに逆らえるハズもなく
(いや!香月は関係ないだろ!?俺の優しさに心を打たれたんだよ!?)
上級魔物は約束を呑んだ
えー我らが魔王様と仲良いから逆らったら殺されると思ったからだと思うな
その時にレイも一緒にいたからレイも事情を知ってるんだって
なるほどねぇ…
話を聞き終える頃には私達はヤク村へと到着した

村長とはどんな話かわからないから念の為に姫を村の入口に待たせてからレイと私は村長の家へと向かう
「勇者さん、約束が違いませんかー?」
村長はいきなり顔を合わせると、挨拶より先に強い声音で私を責めてきた
想像していたより若く小肥りな村長だな
レイと私は出入口を塞がれ、武器を持った村人達に囲まれる
この状況にレイは眉を寄せた
いきなりこの展開って…話し合う気0なのか
「約束とは、上級魔物が貴方や村人達を襲わせないってコトですよね?」
「それがー、数日前にうちの村人が2人もやられたんですよねぇ
どういう事か説明してくれませんかー?」
言い方が煽りと攻め立てる感じにイラッとする不快感がある
説明しろって言われても私はまだ上級魔物と話もしていないのに
「説明しろと言われても、オレ達はまだ上級魔物からの話を聞いていない
一方的にあんたの話だけでは何とも言えないな
彼に会って話を聞いてからでしか答えられない」
私が思っていたコトを先にレイは言葉にした
その時、さりげなく前に出て私を庇うようにしてくれる
「魔物に話も何も、これを見ればわかる事だけど?」
村長は2人の男性を私達の前に連れてきて上着を脱がせた
1人は背中に痛々しい大きな爪でえぐられたような傷がある
誰が見ても人間がやったコトじゃない魔物にやられたと思うような傷だ
もう1人は肩から腕にかけて傷ができていた
幸い死人は出ていなく、今の被害はこの2人だけだと言う
(何故だ…村人達には手を出さないって約束したのに
いや、何か事情があるハズだ
会って話を聞きたい)
私もそう思う…
まずは上級魔物に話しを聞かないとだよね
そう思った私はレイを見上げると、レイも同じコトを思ったのか頷き目で合図をする
でも、私達が上級魔物の話しを聞きたいって言うより先に村長が村人達に命じた
「捕らえよ
勇者でも、魔王と繋がっている噂があるから殺しても問題にはなりませんよねー」
命令と同時に村人達は跳ねるようにして私達に飛び掛かってくる
「待て!まずは上級魔物の話を聞いてからだ!」
レイが私を守るようにして村人の攻撃を受けて叫ぶが、村長は聞く耳を持たない
「レイ、アイツと話しても無駄だ
なんとかココから抜け出して上級魔物に会いに行かないと」
私も短剣を抜き村人達からの攻撃を受け流す
癖で普段から使っていた短剣を使ってしまったのが間違いだったかもしれない
リジェウェィさんの剣ならどうにかなったかもしれないと後悔しても遅かった
村人達は予想以上に強く、私は背後を取られた村人に強く頭を殴られて膝を折ってしまう
「セリッ!?」
レイが顔を真っ青にして私に手を伸ばす姿を最後に私の意識はあっという間に暗闇に落ちてしまった

すぐ負ける弱い私はいつもこうだなって思うよ!
気が付き、目を開けると私は埃っぽく薄暗い小さな小屋にいた
殴られた頭からは血が流れた跡がある
頭が痛むから抑えたくても手を後ろに縛られていてどうしようもない
レイは…?ココにはいないのか……
私以外に人の気配がないってコトはレイは別の所に?
私が弱いせいでレイを危険な目に合わせてしまった……
いつもそんな感じがする……
レイのコトを気にかけていると小屋のドアが静かに開いた
「あら、気を失っているかと思ったらもうお目覚めなんですのね」
逆光で顔はよく見えないけれど、話し方とシルエットですぐにそこにいるのが姫だとわかる
もしかして…助けにきてくれたの?
絶対嫌われてると思ってたのに姫が私を助けに来てくれたなんて…!ちょっと感動!?
こういう時、心強いのは一国の姫だね!!
それじゃレイも無事だよね
「心配しなくてもレイの事は助けましたわ」
「そっか…レイは無事なんだ
よかった……」
ホッと一安心していると、姫は手に持っていた大きめな容器の蓋を開けた
何をするのかと思ったら、その中の液体を小屋の中にぶちまける
「えっ…?何を…?」
イヤな予感がした私は背筋が冷える思いをする
(この匂いは…油か……?)
油…?なんでそんな…
なんて不思議に思うコトなんてなかった
姫はマッチを取り出して火を点す
そこでようやく姫の顔がよく見えた
冷たい目で私を見下ろすその表情は憎しみや怨みや怒りのような負でできている
「レイはね、貴方の事を1番の親友で信頼しているのですわ」
私もレイのコトは親友だと思ってるケド…
「心底…誰よりも貴方が1番なんですのよ……
毎日毎日いつもいつもいつも貴方の話ばかり…!」
姫はみるみる顔を酷く歪めて私に嫉妬の怒りをぶつけてきた
「最初は所詮親友だとも思っていましたけれど
レイにとっては恋愛よりも家族よりも自分の趣味よりも、何であっても貴方には勝てない…」
姫は私の傍まで来ると怒りのままに固いヒールの先で肩を踏み付けてくる
それ凄く痛いからね!?
「貴方さえいなければ」
手を後ろに縛られている私は抵抗できなくただ痛みに耐えるしかなかった
「レイのコトは俺も親友だって思ってる
姫が嫉妬する気持ちもわかるが、どれだけ姫が嫉妬してもイヤと言っても
俺はレイの親友を止めない
他人に言われて壊れたりなくなったりする友情なんて、本当の親友なんて言えねぇと思うから…」
痛みに耐えながらも私は姫の目を見て強い声でそう言った
レイはセリくんの親友だから…セリくんの大切な親友の1人
姫は私の親友を止めない発言にカッとしてヒールで踏み付けていた肩を押し蹴る
そうして、姫は小屋の出入口のドアまで戻ると私のほうに振り返り最高の笑みを浮かべた
「そう、でもいいですわ
貴方はここでさようならですものね」
姫は火を点したマッチを小屋の中に放り投げてドアを閉めて行った
「待っ……!!」
マッチが床に落ちると一瞬にして油を伝い小屋内を火の海にする
(セリカ!)
わかってるよセリくん…
暑い火の熱と黒い煙に喉をやられながらも私は手を後ろに縛られてバランスの取りにくい身体でなんとか立ち上がる
(ドアからは逃げられない
後ろにある窓のガラスを割って逃げるしか…)
言われて窓の外を確認すると少し深そうな川が流れている
でも…少し…流れが早いような……
手を後ろで縛られている私はこのまま川に飛び込んでどうにかなるの?
セリくんも川の流れを見てから同じコトを思ったのか一瞬黙り込む
(…ココで焼け死ぬよりは……一か八かで……)
そうだね
私は覚悟を決め、おもいっきり窓をぶち破って川へと飛び込んだ
思っていた以上に流れの速い川を上手く泳ぐコトなんてできなくて私はすぐに飲み込まれてしまう
1日に2回も気を失うなんて情けないな……
ピンチな時って自分が1番大切だと思う人の姿が過ぎるんだね
私は大好きなイングヴェィの姿を
セリくんは1番の親友の姿を……

(香月…)
「香月…」
真っ暗な中でずっと苦しかったのが、瞼に光を感じると苦しみから解放される
ゆっくりと目を開けると間近にレイの顔があって、唇に温かくて柔らかい感触がある
ッ!?私、今レイにキスされてる……ッ!?
「っ……意識を取り戻したのかセリ
よかった……」
レイの顔が離れると心配から安堵の表情へと変わっていく
な、なんだマウストゥーマウスだったのか、ビックリした
(人工呼吸って言え)
何よ!セリくんは恥ずかしくないの!?
私はイングヴェィともちゃんとキスしたコトないのに!
(別に、溺れてたんだし
仲間が息してなかったらそれくらいするだろ)
女の子はいくら人命救助でも気にするの!!
(面倒くせぇなそれ
そんなコト気にしてたら死ぬだろ)
……………。
レイを見るとずぶ濡れになっていて、それは川に流されて気を失っていた死にかけの私を助けてくれたんだってコトが言わなくてもわかる…
「あっレイ…傷が……」
レイの腕には枝か何かで引っ掛けたような傷があった
「ん?これくらい対した事じゃない」
レイは爽やかに笑うケド、川は昨日の大雨で荒れて木の枝とか危険なものもたくさん流れていたと思う
私はレイの手を掴んで、回復魔法で傷を塞いだ
「ありがとうレイ…助けてくれて」
「おう、当然だろう
オレはセリの親友……」
レイは言いかけた言葉を途中で詰まらせる
「レイ?」
「じゃないか」
聞き返すと笑ってそう言ってくれた
「うん」
だから私も笑ってそうだよって返す
なのに、レイの笑顔はドコか寂しさを感じさせていた
そして、少し離れた所で姫の殺意を含んだ強い視線が痛く突き刺さっているコトに気付くと私の背筋が冷たく走る
なんだろう…アイツのせいなんだ!ってこうなった状況をレイに話せない
私は訴えたいのに言えないもどかしさにただレイの瞳を見つめるだけしかできなかった
そんな私の心をレイは読み取ろうとしてくれるケド、伝わったのか伝わっていないのかはわからない
暫くの沈黙を私はハッと思い出して破る
「あっ…あの上級魔物に会いに行かないと
村長の話だけじゃなくて、ちゃんと上級魔物からも話を聞きたい」
立ち上がろうとするケド、川のせいで体力を消耗している私の足元はふらつく
「焦る気持ちもわかるが、その身体で無理はするもんじゃない
今日は休んで明日にしないか」
レイは私を支え気遣ってくれるケド
「この村で休める場所なんてないし、気になって眠れないよ」
上級魔物の住む場所はセリくんが知ってる
それほど遠くはなさそうだから大丈夫だよね
私がどうしても行くんだって言うとレイは仕方ないなと肩を竦める
呆れられた?
それでも私に付き合ってくれるレイの優しさは嬉しいよ
「わかった
オレも傍にいるが、無理はしないって約束してくれ」
魔物に会いに行くってコトで姫は馬車の中で待機すると言う
レイと私は2人で上級魔物の住む場所へと向かった


-続く-2013/09/08
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