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『Bilocation』

『Bilocation』22

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『Bilocation』22


イングヴェィの傍から逃げるようにして飛び出す
私は自分の部屋へと向かう廊下の途中で偶然そこにいたレイとぶつかってしまった
「おっセリ?いきなり消えたから心配したぞ」
ぶつかって軽くよろけたセリくんと勘違いした私の肩を掴み支えながらレイは言う
でもレイは私の顔を見るとすぐにセリくんじゃないと訂正する
「セリカか…」
今こんな所で知り合いに会うなんて…
セリくんは大食堂に向かったケド、どっかでレイとすれ違ったんだろうな
私は笑顔が作れない顔を俯けて見せないようにする
「……何かあったのか?」
なのに、レイは私の様子がおかしいコトに気付いて肩を掴む手に力を入れた
「別に…なんでもないよ」
なんとか発した言葉は震えていて、次にレイに何か心配するような言葉を言われたら泣き出してしまいそうな気がする
「それは何かあった時に言う台詞だろう?
我慢しなくていい、何かあったなら聞いてやるし力になるぞ」
「…レイはどうして?」
霞む視界のまま見上げるとレイの表情はわからない
今レイはどんな顔をしているのかな
声が心配してくれてるから心配そうな顔かな
「それは…オレがセリカを……
いや、親友セリの妹なら…力になるのも、当然だろう?」
レイの優しい心に強く心を打たれる
さっきまでの痛みが少し和らいだような気がする
これが魔族のイングヴェィと人間のレイとの違い?
友達の妹っておまけみたいな響きだけど、でも思いやってくれるコトは凄く嬉しい
「セリの妹じゃなくても、オレはセリカなら心配するさ…」
「ありがとう…レイ……」
レイの優しさに思わず溜まりに溜まった涙が流れ落ちてしまって私はそのまま両手で顔を被って泣いてしまった
その間、肩にあったレイの手が強く守るようにずっと抱いていてくれた

5分後、泣いてスッキリした私は自分の部屋でさっきのイングヴェィのコトを話す
「冷たいと思わない!?
自分が創っといて兄弟ごっこに飽きたらポイだよ!?」
怒りと悲しみが混じったような愚痴にレイは親身に聞いてくれる
最後まで話を聞くとレイは困った風に自分の考えを話す
「イングヴェィはオレ達人間と違って魔族だからな
人間の常識や感情は理解出来ないだろうし、セリカが何故怒ったり悲しくなってるかもわからないと思うぞ」
「………それは…」
そうだケド…魔族と人間が違うから対立してるから、当然の話なんだケド……
それじゃ魔族と人間は分かりあえなくて、恋愛なんて難しいってコトなの…?
なんかヘコむわ~…
「イングヴェィは魔族だからこうなんだと理解して合わない所はこれが魔族だから仕方ないで済ますしかないな」
「理解はしたいよ!理解はしたい…仕方ないで済ましたくない……
そうしちゃったらそこで終わっちゃうでしょう……」
イングヴェィのコトは受け入れたい…
でも、やっぱり不安や心配になっちゃうから悩むんだもん……
イングヴェィのコト好きじゃなかったらこんなに悩むコトもないし、普通に魔族と人間として良い意味で接するコトができたかもしれない
「………………。」
頭の中で色々考えてると、レイとの会話が止まっているコトに気付く
あれ?レイどうしたんだろう?
「レイ…?」
急に黙り込んだレイの顔を見上げると、視線が合う
「セリカは…随分とイングヴェィの事を気に入ってる様子だな
…仲良いのかい……?」
「仲良い…ん~よくわかんない…」
仲は良いと思う…でも別に付き合ってるワケじゃないし恋人同士じゃないと思うのよねまだ
だからと言って友達でもないし…
イングヴェィと私って何?と考え唸っているとレイがそれを中断する
「何でもない、忘れてくれ」
「ハッ!仲良いなら結夢ちゃんとかルルさんとかもだよ!!」
2人ともセリくんの私と、だケド……
香月さんはセリくんの私とじゃなく100%セリくんとだからノーカンにする
恋時はチャラいから論外
リジェウェィさんは言いそびれた
「もちろん、レイとも仲良しだよ
こうして話しを聞いてくれるもんね」
だよねって明るく笑いかけると、レイは一瞬息を呑み表情を固まらせたケド
すぐに和らげて優しい笑顔を浮かべて頷いてくれた
「あぁ、そうだといいな」
「そうだといいなってどういうコト!?
レイは私のコト友達だと思ってくれてないの!?」
「さぁどうだろう?」
レイの奴…意地悪してるのか?
私が軽く拗ねてムッとなってるとレイは私の頭に手を乗せて優しく撫でた
「少し元気が出てきたみたいじゃないか」
「違うよ!レイのせいで私はおこだよ!」
「セリカが怒っても恐くないぞ」
レイは笑って宥めるように私の頭を自分の胸に引き寄せる
押さえ付けられるような感覚に身動きが取れない
でも、レイは温かくて良い匂いがする
イングヴェィも良い匂いはするけれど…体温がないからレイのような人間の温もりはない
「なんか、レイといると心が休まるような気がする…」
ホッとする温かさに思わず笑みがこぼれる
イングヴェィといる時はドキドキするし、心が愛しさで溢れだして大忙しだもんね
恥ずかしがったり照れたり不安になったり心配になったり…それが恋で
この気が許せるような休まるような感じが…友情ってやつなのかな
「……そ、そうかい…照れるな」
最後のほうの言葉が聞き取りにくかったケド、私が聞き返さないようにレイは続けて話す
「セリも小柄だが、セリカはさらに小さくて細いからあまり強く触ると壊れるんじゃないか」
「壊れないよ!人間はなんやかんや丈夫にできてるんだよ!」
私を押さえ付けるようなレイの手が和らいで私は顔を上げる
すぐ近くにある顔は私がいつもセリくんになっている時に見るレイとは違う表情をしていた
その表情を見ていると急にイングヴェィに会いたくなってしまう
「私…明日、イングヴェィともっかいお話する
イングヴェィと喧嘩したままなんてイヤだから」
イングヴェィの名前を聞いたレイの表情が崩れて私に触れていた手が離れた
「…ちゃんと仲直り出来るといいな」
いつものレイの爽やかな笑顔はドコか不自然で、コロコロと変わるレイの空気に私は首を傾げて頭の上にハテナを作るコトしかできない
レイは変……
それからレイと私は遅れて大食堂に行き、なんやかんやしてたら今日1日を終えた


次の日、眠っていた私のところに手紙が届けられた
速達だって郵便配達員の魔族の人が私を起こす
「え~まだ眠いよ~」
(…zzz)
朝になってセリくんの身体に戻った私の中でセリくんだけ寝ててズルイ……
目を擦りながら手紙を受け取ると配達員は「アデュー」と言って部屋を出ていった
何人だ
「二度寝したいな…」
呟きながらも速達の手紙の内容が気になったから目を通すコトにする
その手紙には短く「約束が違いませんか?すぐにヤク村に来てください」としか書いていなかった
ヤク村?ドコそれ
差出人はヤク村の村長と書いてるケド
(なんなんだよこんな朝っぱらから…)
朝早くから起こされて機嫌を悪くしたセリくんが私の目を通して手紙を見る
(ヤク村の村長って…アイツか
約束が違うってなんのコトだ?)
わからない…から、行ってみないとだよね
手紙を封筒に閉まって私は着替え始める
あ~あ…今日はイングヴェィと話して仲直りしたかったのに
でも、なんか急用っぽいから先にヤク村の村長に会いに行かなきゃダメだよね
着替えと顔を洗い終えた頃、部屋のドアをノックされてレイが入ってくる
腕にベッタリくっついた姫付きて…
「朝からラブラブですね」
アハッと笑うとレイの表情が凍り付いて引き攣ったのがマジだった
「そうなんですのよ」
高笑いをする姫を横にレイは私を見る
「朝早くからセリの所に配達員が来ていたみたいだが、何かあったのかい?」
「知ってたのかレイ
なんかヤク村の村長から呼び出しだよ
約束が違うからちょっと来いって言うな」
「ヤク村の村長…あいつか」
セリくんと同じような反応ってコトはレイもその村長のコト知ってるのね
(前にちょっとした面倒事があったんだよな
解決したつもりだったんだが…)
「ヤク村にはオレも同行しよう
あの村長には悪い噂があるからな」
(悪い噂?オレは初耳だが…一体どんな噂が…)
レイは心配して一緒に来てくれるんだね
悪い噂が気になるケド、ありがとうって私が微笑むと姫がレイと私の間に割り込み
「レイが行くならあたくしも一緒に行かせてもらいますわ
あたくしが知らない名ですから、ど田舎の村でしょうけれど
悪い噂のある村長にレイが会いに行くと言うならば
あたくしが同行してレイに無礼を働かないかしっかりと見ていなくては
もしその様な事があれば村毎潰して差し上げますわ」
面白そうに話す姫に「え来なくていいよ邪魔だし」とも言えず黙るしかなかった
「なにせレイは未来の国王になる方なのですからね」
(未来の国王…?)
姫の発言に姫以外の私達は一瞬時間が止まったような感覚に陥る
「実はレイはどっかの国の王子様でしたって言うオチなの?」
「まさか?オレは正真正銘の一般人だぞ
………………。」
私の言葉にはそう返してきたけれど、その後のレイは視線を逸らして複雑な表情に唇を噛み締めていた
レイ…何か悩み事でもあるのかな
そう思わずにはいられないくらいのレイの様子に心配の目を向ける
でも、何か悩んでるなら言ってほしいのに
私達…
(俺達…友達なのに……)

ヤク村に行く準備をして出発する時、結夢ちゃんが城の門まで見送りに来てくれた
「私も一緒に行きたい
今度こそセリくんの力になりたいの」
結夢ちゃんの小動物のような健気な目を向けられて私の心がめちゃくちゃ揺れる
でも…!悪い噂のある村長に会いに行くのに、何があるかわからない所に結夢ちゃんを連れて行けるワケないよね
「ゴメン、結夢ちゃん
危険かもしれないから今回も連れていけそうにないんだ…」
って言ってたらドコにも一緒に行けないような気がしてきた
ドコも危険だらけだもんね
「危険だからこそセリくんの傍にいてお手伝いしたいと思うのに…」
だんだんと結夢ちゃんの瞳が潤んでくる
「そう思って言ってくれるだけで嬉しいよ
でも、俺は結夢ちゃんを危険な目に合わせたくないから…今回も留守を頼むコトになるケド
帰りを待ってくれてたら……」
「……はい…これ以上、言うと迷惑になってしまうから
私はここでセリくんを待っている事にするわ
絶対に無事に帰ってきてね」
これ以上言っても自分は連れて行ってもらえないと思った結夢ちゃんは私の手を強く握ってお祈りをしてくれる
おまじない程度の魔法だケド、結夢ちゃんの心配する気持ちが強く伝わってきて
なんでもできるような気がしてきた!!
(結夢ちゃん…なんて良い子なんだ……
セリカがいなかったらこんな可愛い良い子に出会えなかったな!)
私に感謝してよねー!
結夢ちゃんが手を放し、私達は門を潜り外に出ると確認するように腰に装備したリジェウェィさんに作ってもらった剣に触れる
「良し、準備はOKだからヤク村に行こうか!」
「セリ…荷物忘れてるぞ…」
「おっと」
さっき結夢ちゃんと話してる時に荷物を足元に置いたんだった
気合い入れて、行こうか!とか言った自分が恥ずかしい
全然準備万端じゃなかったね
「こんなに抜けてる方が勇者だなんて、今回のヤク村までの道のりも不安ですわ
あたくしには1匹も魔物を近付けさせないでくださいまし
貴方は死んででもあたくしを守りなさいな
かすり傷でもできようものならお父様に言い付けて無能勇者の国毎滅ぼしますわ」
「………が、頑張りま~す…」
ム…ムカつく……だったら着いてくんなよ
引き攣りながらも笑顔で返した私は大人だよね!
今の私はヤク村の村長よりこの姫のほうが不安
スゴイ敵意を感じるんだよね…
ヤク村までは少し距離があるらしく、私達は今回は馬に乗って行くコトにした
姫は豪華な馬車でね…
出発すると隣に並ぶ馬に乗ったレイが話し掛けてくる
「結夢ちゃんと良い感じじゃないか」
ハハハって笑うレイに私は
「レイまで恋時と同じコト言うんだな
俺と結夢ちゃんはそんなんじゃないって、ただの友達だよ」
呆れた声を出す
セリくん自身も結夢ちゃんに対して恋愛感情なんてないのに
「そうかい
オレは結夢ちゃんならセリの彼女に良いと思うけどな」
「まぁ彼女にするなら結夢ちゃんみたいなタイプかカッコイイお姉さんだな!」
全然タイプが違う正反対だけどどっちも好き
「カッコイイお姉さんが好きはずっと言ってるから知ってる」
「レイも好きな子いるんだろ?
前に聞いた時、結局聞きそびれたから気になるな」
私の話からレイの話になるとレイは顔を赤くしてわざとらしく視線を反らす
「…言えない
セリの身近な人だから驚くだろう」
私の身近な人……
「やっぱり…あの姫がレイは好きなのか…?」
チラリと後ろにある馬車に目を向けてからレイのほうに視線を戻すと
さっきとは変わってレイは眉を寄せて声を低くした
「…もうこの話はやめよう
オレから振った話だが悪いな、終わりだ」
「えっ?なんでだ?
どうしたんだよ急に機嫌悪くして、違うなら違うって言ってくれりゃ…」
レイがどうしてキツイ口調で言うのかわからない
いつものレイなら違うなら「違うよ」って笑って言うのに
(レイらしくないな…)
少し馬を寄せてレイの機嫌を伺うように顔を覗き込むと
「……その顔で何でもない風に言われると傷付く…セリは本人じゃないのにな
そっくりだから錯覚するんだ」
ふっとレイは悲しみ混じりに苦笑する
呟くように言うから傷付くまでしか聞こえなかった
「なんかゴメン…レイが傷付くようなコト言ったみたいで」
レイが姫を好きじゃないのはよくわかった
好きじゃないのに、好きなの?って言われたらそんなんじゃないって
他に好きな人がいたら怒ったりもするよね
私も結夢ちゃんとのコトを恋時に言われて、違うしって思ったもん
女同士だから怒るまではいかないケド
私が誰かに恋時のコト好きなのか?って聞かれたら全力で否定して怒るわ
だって私はイングヴェィが好きなんだもん
本気で好きな人がいた時、周りから違う人のコトを言われたらよく思わないのは当たり前のコトなのかも
私が申し訳ないって顔をしているとレイは気にするなっていつもの爽やかな笑顔を見せてくれた
…レイの好きな人って、私の身近な人って…誰なんだろう


-続く-2013/09/01
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