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『Bilocation』

『Bilocation』21

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『Bilocation』21


(……ね、眠れない…)
夜になってベッドの中で目を閉じてみるケド、私はさっきから寝返りばかりうっている
そんな私にセリくんが眠れないと苦情を言ってきた
「だって不安なんだもん!セリくんは好きな人とかいないからわかんないかもだケド
恋する乙女はちょっとしたコトで恐くなるんだから!!」
一心同体、どんな時でもどんなコトでも繋がっている私達でも
セリくんには私のこの気持ちが理解できない
伝わっていても理解できないんだから…
枕を抱きながらゴロゴロする私に呆れるセリくん
(心配しすぎなんだよオマエは…イングヴェィはセリカが好きって思うより何億倍もセリカのコト好きだろ)
それは今だけで、明日になったらわからないよ
明日になったら嫌いになるかもしれない
1ヶ月後は?1年後は?その先ずっとは?
最初はリジェウェィさんを兄として慕っていたらしいイングヴェィが今は手の平を返したようにリジェウェィさんを手放したんだよ?
私だっていつか…って不安になるのは当たり前じゃん
未来のコトなんてわからないから悩むなんて時間の無駄だってセリくんの言うコトもわかるケド…
これが恋の病ってやつなの!
枕ゴロゴロを何往復したかわからない時、部屋のドアが静かに開かれたのがわかる
ッ誰!?ノックもなしに入られて一瞬警戒をするが、近づいてきた姿を確認するとすぐに警戒心なんてなくなる
「…イングヴェィ?」
姿を確認してすぐに名前を呼んだ
でも
「セリ」
すぐにイングヴェィじゃないとわかった
瓜二つでも、私はリジェウェィさんとイングヴェィが違うってわかる
イングヴェィじゃないとわかると私の心が残念だと落ち込んだ
すぐに何ともない風に振る舞う
「どうしたんだリジェウェィさんこんな夜中に?」
「先ほど読んだ本に書いてあったのだ
友人とは川の字になって寝転び、好きな人の話をしたり怖い話をしたり、枕投げをしたりするのだと」
リジェウェィさんは魔法で私のベッドの隣にもう1つベッドを出し腰かける
一体何の本を読んだのか知らないケド、それは修学旅行の話じゃないのか……
(枕投げとかガキの頃に恋時とやったっきりだな)
リジェウェィさんはやっぱり読みにくい表情で話すケド、行動から友情への憧れが強いと感じる
「何でも話すといいぞ」
他人任せ!?
自分は話題がないのか私に話題を求めてきた
何を話せばいいのかな…
って言うか、友達ってなんだろ?
リジェウェィさんを見ていると友達ってコトを考えさせられる
私にも友達がいないし…
(友達って信頼と気が合わないとなれねぇと思う
リジェウェィさんのコトは嫌いじゃないし信頼も多少はあっても…
リジェウェィさんには悪いが、気が合うかって言われたら…答えられないな)
確かに…セリくんから流れてくる友達って呼べる人と言ったら香月さんとレイと恋時とかで
その中でも1倍の信頼があるのは香月さん、気が合うのはレイってのはわかる
リジェウェィさんとも友達になれたらいいのに…
さっきは流されて「俺達友達だろ」って簡単に口走って頑張るって思ったケド
友達って簡単になれないから凄く大切で掛け替えのない存在なのかも
「リ、リジェウェィさん……」
リジェウェィさんの気持ちと私達の気持ちがすれ違ってるんだってわかると涙が溢れてくる
「ゴメンねぇええーーー!!!」
ちゃんと友達になってあげたいのに、リジェウェィさんとはどう接したらいいのかわからない
今は友達になれる自信がない
友達って何かを確認して私の心がきゅうって苦しく鳴る
口では「俺達友達だよな」って言えても、心から友達と思えなきゃ
少しでも離れたらそのまま疎遠になっちゃう
友達になるのって、友達を作るのって、こんなに難しいんだ……
「どうした?何故、泣くのだ?
心配せずとも、お前の武器ならちゃんと作ってやるぞ?」
そんなコトで泣かねぇよ!?ってか武器作ってもらうのに来たってのも忘れてたしな!!
リジェウェィさんは表情なく私の顔を覗き込み宥めようとする
いきなり斜め上すぎな言葉にカッとなったじゃないか
イングヴェィに瓜二つのリジェウェィさんの顔がこんな近くにあってもドキドキしないんだな…
それも私には不思議なコトだった
「…怒るな、わかっている
本当はお前が俺を友人と思っていない事などな」
(えっ…?)
視線を反らし伏せるリジェウェィさんを見て私の心がさらに痛む
「一緒にいる時間も少ない
相性も良いとは言えないだろう」
その言葉に私はおろおろするしかなかった
自分達の心をリジェウェィさんはずっと見透かしていたみたいで…申し訳なくなってくる
「俺はお前の友人らには勝てないのだから、100%を求めたりはしない
1%で良いのだ
それでも友人と言えるだろう?
俺はそれで満足だ
気楽にいろ、俺とお前だけの友人関係で良いのだ」
「リジェウェィさん…」
反らしていた視線を戻しリジェウェィさんがまっすぐに私を見る
難しく深く考えすぎたのかもしれない
1人1人、友情の形や在り方があるのに
私はすべて100%で考えていたのかもしれない
1%でも友達、ちょっと気が合わなくても、ちょっと相性がよくなくても
友達になりたいって思ったらそれでもう友達になれるんだ
リジェウェィさんが言ってるのはそう言うコトなんだね…
(リジェウェィさん良い人だ…
こんな失礼な俺でも友達になりたいなんて言ってくれるなんて……
香月やレイと比べるなんてバカだし最低だよ
俺はリジェウェィさんをちゃんと見るべきだった)
うん…
なんか今回のコトで少しだけ友達の作り方がわかったような気がする
こうして友達ができるんだ……
「……少しは…妬くがな………」
ぽつりと呟くリジェウェィさんの言葉は辛うじてて耳に届いた
「その気持ちはわかるよ
俺も友達が俺じゃない違う奴と仲良くしてたらヤキモチ妬いちゃうから」
ハハって笑うとリジェウェィさんも頷く
友達を取った取られたとか子供みたいな振る舞いかもしれないケド、それが私の友愛の形だから…いいよね
私の友達……なんか嬉しい
(俺の友達)
いいでしょ!セリくんの友達は私の友達なの!!
とりあえず、リジェウェィさんと私(俺!)はこうして友達になったのである
夜遅くまで起きていた私はこの後すぐに眠りに入っていった


なんやかんやリジェウェィさんの家に過ごす日もあっという間に過ぎていき
そして、リジェウェィさんが作った私だけの武器が完成した
「わ~!スゴイ!なんか綺麗な剣だし、めちゃくちゃ軽いのに…切れ味抜群……」
初めての武器、初めて切れ味を試した相手…今日の夕食にされる牛肉
その切れ味の凄さに横でミソラさんが拍手している
いやぁ~…いいのかコレ?牛肉切ってるだけだケド…
外に出てスラ〇ムレベルの敵で試すとかなんで私はしなかったのか
「その剣はお前の願いを叶える
強く願えば、どのような強敵も倒す事が出来るぞ」
「それって俺最強じゃないですか!?
いいんですかねこんなチート武器!?」
軽くて綺麗な剣で、すぐに折れたり欠けたりしそうなのに、そんなにスゴイ武器なんだ…
牛肉を切った刃を布で拭きながら改めてジッと剣を眺める
「しかし、お前次第で紙も切れぬほど使いものにならない剣に変わる事もある」
私次第で…変わる剣……
ちょっと不安だな
私の願いを叶える剣って聞いて喜んだケド、紙も切れないほどゴミ武器になるコトもあるって聞くと…
それってどんな時だろう…
剣を向けるなんて、敵にしかないコトなのに
……元から持っていた短剣もいざって時のために一緒に持っておこうかな
小さな心配を和らげるように私はそう思った
セリくんの短銃も何かあった時のために持っとくね!!
(弱い奴ほど武器をあれもこれもと持ちたがるって笑い者にされるだろ!)
実際弱いでしょ…
(ぐっ…)
「でも、ありがとうリジェウェィさん
俺だけの武器を作ってくれて」
「うむ」
なんやかんや言われても私だけの武器に嬉しさは隠し切れない
笑ってお礼を言うとリジェウェィさんは頷く
今日は帰るケド、また遊びに来るねって約束もする
こうして私は新しい自分だけの武器をゲットし、香月さんの城へと帰るのだった

リジェウェィさんの隠れ家を出ると、1匹の伝書鳩が木に止まっていた
それを見たミソラさんは私が「あっハトだ!」って声を出すより先に駆け寄り、その足についている小さな紙を受け取る
「んー…?」
ミソラさんの後ろを見つめながら私は首を傾げるしかできない
伝書鳩はミソラさんが紙を受け取るとさっさとどっかに飛び立っちゃったし…
(あれは確か…
ミソラさんと同盟を結んでいるめっちゃ有名な義賊集団リーダーの伝書鳩だったような……)
そうなんだ?
セリくんの言葉で私はふーんって思うくらいだった
あれ?義賊と同盟?ミソラさんは義賊のお宝を横取りするのに?なんか変…
少し待っているとミソラさんが振り向いて
「行こっか」
と言う
その手にはクシャクシャにした紙が握られているのを見てしまった
ミソラさんの表情もドコとなく曇ってる気がするし…
何かよくないコトでも書いてたのかな?
ちょっと気になり心配しつつも、ミソラさんが帰ろうって言うから私は何も聞かずにそのまま帰るコトにした

香月さんの城に帰ってくるとレイと結夢ちゃんが出迎えてくれる
「おかえりセリ、ミソラさん」
いつもの爽やかな笑顔のレイと
「おかえりなさいセリくん
すぐ帰ってきてと言ってたのに、遅かったから心配したわ」
私の姿を見るとホッとした表情の結夢ちゃんは傍に来て手を掴んだ
「あぁゴメンよ結夢ちゃん」
私もすぐ帰れると思ったんだケドね…
「ルルさんが久しぶりにセリ達が帰ってくるからって、気合いを入れて夕食を作ってくれてるんだ
飯食うついでに顔見せてやれよな」
「マジで!?ルルさんのご飯美味しいんだよな~楽しみだ」
久しぶりにルルさんのご飯の味を思い浮かべるとそれだけでよだれが出てきそうだよ
「それじゃ先にみんなでご飯食べに行こうぜ
ミソラさんももちろん一緒に!」
隣にいるミソラさんに笑顔でそう言うとミソラさんはハッとしてうんと頷く
ミソラさん…なんか元気ない感じ……
「さっ行こう行こう」
ミソラさんのその言葉に押され私達は大食堂へと向かう
その途中で歩いているとある部屋に引きずり込まれた
その出来事はあまりに一瞬で私自身も何が起きたのかわからず、私でわかってないのだからレイ達の誰も私が一瞬で消えたコトに気付いてないと思う
「セリカちゃんおかえり!
久しぶりだよね、ずっと会いたかったんだよ~」
両手を掴まれ引っ張られ、そのまま抱きしめられた私はビックリして身体が強張る
でも、声と匂いと姿にすぐに大好きなイングヴェィだとわかった
「た、ただいま…」
「あ~ビックリした…」
後ろから私の声が聞こえると思って振り返るとセリくんがいる
ちょっと忘れてたケド、夜限定でイングヴェィはセリくんと私を分離(?)するコトができるんだった
「セリくんもおかえり」
いつもの明るい笑顔で私を抱きしめ越しにセリくんにもそう言うイングヴェィにセリくんは冷めた目付きで見る
「はいはいただいま
いきなり連れ込まれてセリカが離れて何事かと思ったぜ
俺は腹減ったから先に行ってるからな」
イングヴェィのこの私大好き雰囲気と激しいスキンシップ、セリくんは苦手みたい
まぁ当たり前か
好きじゃない人にこんな好意持たれたらウザイだけだもんね
セリくんが部屋から出て行くと私はあっと思い出したコトを口にする
「イングヴェィ、私…リジェウェィさんに会ったよ……」
「リジェウェィに?そうなんだ」
変わらない明るい笑顔を向けてくれるケド「だから何?」って言われてるような変な威圧を感じるのは気のせいか……
「イングヴェィはリジェウェィさんに会ったりしないの?」
「リジェウェィと会うよりセリカちゃんと会う方がいいよ」
「でも、リジェウェィさんは寂しいんじゃないかな…
イングヴェィとは兄弟として仲良くしていた時期があったんでしょ?」
「そんなコトもあったかな~…
でも、もういらないからセリカちゃんは気にしなくていいコトだよ…」
イングヴェィは何ともない風に笑顔を浮かべて、私とどうでもいい話なんてしたくないって言う空気を出す
そんなイングヴェィの冷たさに心が突き刺さるように痛む
「いらないからなんて…イングヴェィって冷たい人なんだね……」
痛む胸に顔を俯かせ声を搾り出す
「どうしたのセリカちゃん?急に元気なくしちゃって」
私の変化におろおろと心配しながら顔を覗き込んでくる
「私も…いつかイングヴェィが飽きたらいらないからって冷たくされるの……?
今は私に興味があるから優しくしてるだけで…」
「な、何言ってるの…
俺がセリカちゃんに飽きたり冷たくしたりするワケないじゃん!
俺はセリカちゃんがいなくなったら死んじゃうよ……」
イングヴェィの強い想いは今は凄く感じる
でも、明日は明後日はって未来が私は恐くなって心配になる
震える声と身体がもう耐えられないと足が走り出して部屋を飛び出す
「セリカちゃん…!」
イングヴェィの悲しくショックを含んだ声に呼び止められても私は止まるコトができなかった


-続く-2013/08/25
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