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『Bilocation』

『Bilocation』20

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『Bilocation』20


階段から足を滑らせて転げ落ちそうになった私はミソラさんに助けてもらうと、何故か周りの景色が変わって薄暗い部屋の中にいるコトに気付いた
「あれ!?ドコ!?もう着いた?いや階段はまだまだ続いていたし…」
幻?と思いながら恐る恐る少し歩いてみても落ちる気配はない
階段の上で幻を見てるワケじゃない…
じゃあ…これは
「相変わらずドジな奴だな」
薄暗くて気付かなかった…声がして始めてその方を振り向く
薄暗い明かりの中でミソラさんと私以外にもう1人現れる
その姿は
「イングヴェィ!?ど、どうしてココに…
あっ私が階段で足を滑らせて転げ落ちそうになった所を助けようとしてイングヴェィの力で階段からこの部屋に変えてくれたの?」
イングヴェィにソックリな容姿なのになんだか雰囲気が違うような…と思いながらも喋ってしまう
(あの人はイングヴェィじゃなくて)
セリくんが言うより先に
「まさか忘れたのか?俺の存在を
イングヴェィではないぞ」
否定された
イングヴェィじゃないならアンタ誰よ!?
私の好きな人に化けて目の前に現れる他人なんて許せない~!!
どおりでなんか雰囲気が違うと思った!
「わかった!アンタはイングヴェィになりすまして私を奪いたいのね!
騙されないんだから!どんなに見た目がイングヴェィそっくりでも違う奴に惚れたりしないわ!!」
(アホ!落ち着け!俺の姿でおかしなコト言うな!
またタイミングを逃したケドな…)
はぁ…と呆れたようなため息が私の中で聞こえる
(またさっき伝えれなかったケド、この人がリジェウェィさんだよ
見た目はソックリだけどよく見ると瞳の色が違うだろ?
イングヴェィは深紅の瞳だけどリジェウェィさんは金色の瞳なんだぞ)
えっ何、2人は兄弟?…早く言ってよね!私失礼なコト言っちゃったじゃない!
「あっイングヴェィのお兄さんですか
すみませんね~いつかお嫁にいくのでヨロ」
(セリカのバカ!最後まで聞け
ったく…
リジェウェィさんはイングヴェィが兄弟ほしい!とかいきなり言い出して創り出したんだ
魔族でもない人間でもない存在
前は一緒にいる所をよく見かけたが、今はイングヴェィの奴兄弟ごっこに飽きたのかこうして放置にしてるみたいなんだ…)
それって飽きたから捨てたってコト…?
なんかヒドイそれ…
(イングヴェィは魔族だ
残酷で人間らしい感情なんてねぇんだからな
他の魔族や魔物もそんな感じだし、魔族らしいっちゃらしいだろ
それでもイングヴェィはまだ変わり者の方だぜ?
好奇心旺盛で何にでもすぐ興味を持つケドすぐに飽きる
何に興味を持ってもやっぱり楽しくないんだってセリカが来る前はそう言ってたし)
すぐに飽きる、興味がなくなるって言葉を聞いて私は心がグッと何かに締め付けられるように苦しくなって痛くなった
私も…いつか…そうなるんじゃないのかなって最悪なコトが頭の中でグルグルする
「どうしたのだセリ?
急に顔色が悪くなったようだが…」
「セリさんはいつも顔色悪いけど」
えー!ミソラさん!ヒドイ!よく言われるケド…
「今はとくによくないね
大丈夫?」
リジェウェィさんとミソラさんに心配されて私は現実に引き戻されて少しだけ落ち着く
「だ、大丈夫です…すみません心配かけてしまって」
なんだろう
早くイングヴェィに会って確かめたい
でも、何もしないで今すぐに帰ったら余計2人に何かあったんだって心配かけさせちゃう
私は気合いを入れ直して笑う
「大丈夫!
そんなコトより今日はリジェウェィさんに頼みたいコトがあって来たんだ」
私が元気だよってウソついて振る舞うとリジェウェィさんはまだ心配を残したような顔をしながらも聞いてくれた
「あぁ…お前の頼みならなんでも聞いてやろう」
ヤッタ!なんか簡単~
セリくんからはどう接していいかわからないって聞いてたケド、なんか良い人っぽいじゃん
「あのね、これたぶん前に貰ったと思うんだケド」
そう言いながら私は短銃を取り出して見せる
「これの他にもう1つ俺に合った武器を作ってほしくて…」
「ふむ…良いだろう
言われたものを用意したが、俺もこれはお前には合わないと思っていたのだ」
あ~あ~リジェウェィさんにまで言われてるよ
(カッコよければ…いいんだよ!
どうせ俺はあんまり戦うコトねぇし!戦う前にみんなが終わらせてくれるもんな!)
勇者なのに何もできないって!?
「それじゃお願いします!
また出来上がった頃に受け取りに来るので…って、あれ?帰れないよ…?」
これでさっさと帰ってイングヴェィに会わないとって思ってたのに…
出入口がない…って言うか、来た階段が消えてこの部屋になってるから…どうやって帰ればいいの!?
「帰れると思ったのか?
前と同じく、掃除洗濯料理その他は任せたぞ」
な、なんだってー!?
セリくんの言ってたリジェウェィさんのお願いを聞けば創ってくれるってのはなんでも言うコト聞く奴隷になれって意味だったのか!?
その他って何!?それが1番気になるんですケド
「出来上がるまでは俺の傍にいてもらおう」
「こんな感じですか?」
傍にいろと言うからリジェウェィさんにくっついてみた
「意味がわからない…」
頭大丈夫か?って変な目を向けられたわ
いや~美形だからつい
ちょっとしたセリカジョークですよ
(美形好きなのはジョークじゃなくて本気だろ!?)
はぁ…そんな…今すぐイングヴェィに会いたいのに
(大丈夫だって、1週間なんてあっと言う間だし
それより…)
「あ!ミソラさんは帰してもいいよね!?」
ココまで同行してもらっただけで十分嬉しいし
私のコトで1週間もミソラさんを付き合わせるワケにはいかない
私が言うとセリくんがうんうんと頷く
「うちは残ってもいいよ」
えっ!?リジェウェィさんに訴えていた私はミソラさんに視線を向ける
「今は何処にいても同じだし、セリさん料理とか得意じゃないようなイメージが…」
……ふっ………なんでわかるの!?
料理なんて普段しなーい
イングヴェィのお嫁さんになってから頑張るもーん
(俺は知らないぞ…実際に嫁になってから苦労しても……)
「大変かなって思って」
手伝うよってまだ付き合ってくれるミソラさんに感動
今までずっと遠い存在だったのに、こんなにもたくさんお話できて近くに感じる
それってスゴイコトだよね
「ミソラさん…良いんですか…」
「別にその女はいらないのだが…まぁいいだろう」
リジェウェィさんからも好きにしろって言ってもらえたし
1週間はなんとか楽しく乗り越えられそう!
「俺は隣の部屋にいるから、まずは洗濯が終わったら掃除と料理を頼んだぞ」
洗濯ってこの寒い季節にやりたくないな~…ハッ
「洗濯!?レディの私達に男のパンツを洗えと!?」
(…セリカが俺の姿で自分の女物の下着を普通に買いに行くコトの方が俺にとったら大問題なんだケド……誰も俺を男だって疑わないし…)
またセリくん落ち込んだ!?
結夢ちゃんとかに女物の下着買いに行くのを頼むよりはいいでしょ?
(ハッ!?確かに!!そっちの方がもっとイヤだ!!)
女の子の私が下着つけてないほうが大問題でしょ?
(そ、そうだな…
店でまだ俺が女の子と勘違いされて誰も気にしないほうが全然良いな)
セリくんは勇者として有名だからみんな知ってそうだケド、反応からして性別わかってない人は多そうだよね
この見た目は性別不明なミステリアスな感じ?
リジェウェィさんは私達に洗濯掃除料理を頼むと隣の部屋に閉じこもった
その後すぐに薄暗い部屋はミソラさんが点けてくれた明かりで見やすくなる
明るくなって改めて部屋を見回し
「結構…綺麗にしてるんだね……」
棚の上を指でなぞってみてもホコリ1つない…
「ドコを掃除すればいいの!?すでに綺麗だケド!?」
(リジェウェィさん綺麗好きだからな)
それじゃ今日からじゃなくてリジェウェィさんが閉じこもっている間の明日から掃除しろってコトかな
洗濯ももう今日の分は終わってるっぽいし
今日やるコトは料理くらいしかなかった!
食材も十分に揃ってて、ミソラさんと協力して夕飯はハンバーグにしてみました
(今俺達が食べたいもの!)
ちょっと早いケド他にするコトもないからできた夕飯をリジェウェィさんのいる部屋まで持っていく
「ご飯持ってきたケド!…あれ?いない」
確かにこの部屋に入ったと思ったのにシーンとして人の気配がない
「すまないな」
「ひゃっ!?」
何故かすぐ後ろからリジェウェィさんの声がして驚いてしまう
いつの間に?いなかったのに
「置いとくね…」
ちょっと行動が読めない人だなと思いながら私は近くにあったテーブルに食事を置いて部屋を出ようとしたら止められる
「暫くはそこの椅子に座っていてくれないだろうか」
えっ何!?私が可愛いから私をモデルにして絵が描きたいって!?
「いいケド、俺もお腹空いたよ~
ご飯持ってきて食べていい?」
「うむ、その時にあの女を連れてくる事はするな」
「え…」
許可を貰って私は自分の分のご飯を取りに戻る
ミソラさんも誘いたいのにダメって言われるなんて
ミソラさんを1人にさせるなんてヒドイ!!
私がミソラさんに目で訴えると
「気にしなーい
夕飯くらい1人でも大丈夫だから」
私の気持ちを読み取ってそう言ってくれる
でも私はせっかくの憧れのミソラさんと一緒にご飯っての楽しみだったんだケドな…
仕方なく私は自分のご飯を持ってリジェウェィさんのいる部屋に戻った
「いつもドコで遊んでるの?」
「遊ばない」
「好きな食べ物は?」
「とくにない」
「趣味は?」
「とくにない」
「好きな女性のタイプは?」
「とくにない」
「……………………。」
何この人つまんない…
一緒にいるのに沈黙が気まずくて色々話しかけてみたケド、会話にならないし私が話しかけないとまた沈黙が続く
(…リジェウェィさんは用件しか言わないような人だからな)
セリくんが言ってたどう接していいかわからないってこういうコトなのね…
一緒にいても話さないのにどうして私にココにいろって言うんだろう?
会話は苦手だケド意外に寂しがり屋さん?
「…イングヴェィとは今は会ったりしないの?」
「しない
…イングヴェィはもう俺に興味がないのだ
創ったままで消す事すら忘れられるくらいにな」
リジェウェィさんの言葉はいらなくなったなら消してほしかったと言う意味にも聞こえた
「イングヴェィだけではない皆に忘れられていた俺でも
こうしてお前だけが来てくれるのは嬉しい事なのだぞ
その銃を創った時も…」
寂しさと悲しさが混じっていた声が少しだけ明るくなる
私を見て少しだけ笑うリジェウェィさんがどうして傍にいろって言ったのかわかるような気がした
セリくんだけがリジェウェィさんを忘れなかったからなんだね
(えー…っと…感動的な友情シーンっぽい所で悪いんだケド
前回はたまたま街でリジェウェィさんに会って自分の武器が決まらないって言ってたら創ってくれて
俺自身も実はその時に会うまで忘れてました…
それからセリカが自分に合った武器ほしいって言わなかったらリジェウェィさんのコトは思い出さないだろうし一生会いに来てないと…思う……)
セ…セリくん!?なんてそんなショックな事実を言うの!?聞きたくなかった!!
リジェウェィさんはセリくんのコトまったく疑ってない信じ澄み切った輝く瞳で見てるよ!?
ココは「ふっ友達のコト忘れたりなんてしねぇよ」キリッみたいな友情再確認じゃないの!?
セリくんもみんなと同じで忘れてたなんて!
リジェウェィさんに申し訳ないって言うか心が物凄く痛みます
(俺もスゴイ痛んだ…ゴメンみたいな
そんな風に思われてたなんて知らなかった…)
この真実は私達の心にだけ閉まっておいて黙っておこう
どう接していいかわかんないし付き合いにくいケド、リジェウェィさんがいてくれて嬉しいって言うなら友達になれるように頑張る
「うん、だって俺達友達だろ
今度は何かを頼みに来るんじゃなくて遊びに来るよ」
「あぁ…待っている、いつまでも」
顔もイングヴェィそっくりなのに笑顔は少し違うんだね
笑うコトに慣れてないって感じがする
でもリジェウェィさんが笑ってくれてよかった
誰かが笑ってくれるって嬉しいね
目の前の笑顔を見ながら私は思い出す
イングヴェィのコトを、そして不安になるの
私もいつか興味を持たれなくなったら…って


-続く-2011/12/13
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